シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


――よし、そのまま。そのまま維持してみろ!!!


無我夢中だった。

0と1がどうの…そんなものを力として変換するよりまず先に、僕の心が力を作った瞬間。


怒濤のように0と1が流れ込んできて。


循環する。


僕の力が0と1を生み、生まれた力が0と1となる。


そこには、異質な虚数など何もなく。

純なる二進法の世界が拡がって。


0と1が僕の想いと重なり同化していく。


僕の想いで拡がった世界は、

まるで疑似電脳世界。


僕が創造した小世界。


力を放出し終えた僕は、初めてのその感覚に、呆けたように床に座り込んだ。


一種の…陶酔したようなトランス状態。


――いい処だろう。ただ自惚れるな。お前は創造主ではない。神になるな。


僕は頷き、肩で荒い息を繰り返す。


――今は12時。そろそろ氷皇の結界が消える時間。力の稽古はこんなものだろう。


それから体術の稽古に入ったんだ。


――お前の筋肉は何の為についている!!! 飾りか!!? 気を巡らせて、細胞を目覚めさせろ!! 眠らせるな!!!


緋狭さんの稽古よりきつかった。

何でもそれなりにこなしてきた僕にとって、罵倒され叩きのめされるのは気持ちいいモノではないけれど。


そうされているのは、僕が日々の鍛錬をしていなかったからのこと。


煌を思えば、可愛いモノなんだろう。


朱貴の指摘は鋭く的確で、反論の余地すらない。


強くなりたい。

強くなりたい。


それだけを願いながら、僕は必死に朱貴に食らいつく。


――玲、諦めるな。


僕の何処かで緋狭さんの声を感じて。


朱貴は強すぎた。

僕が思っていた以上に、何もかにもが強靱で。

全力の僕の攻撃を難なく躱したり、弾いたり。

僕が汗でぐっしょりと濡れた服を脱いでも、朱貴は涼しい顔をして白衣だけを脱ぐだけで、咥え煙草で相手をする余裕もまである。


その差に、僕は歯を食いしばる。

氷皇の目は決して節穴ではなかった。

僕にとって紅皇はやはり緋狭さん以外にはありえないけれど、それでも緋狭さんが認めた朱貴に教えを乞うて正解だと思う。


今の僕には、朱貴の厳しさが必要だ。

甘ったれた心身には、刺激が必要だ。


そんな僕に触発されて、紫茉ちゃんも真剣に頑張っている。

彼女の動きも元々素人離れしているものだが、何よりめげない、くじけない。


女の子なんだから、容赦なく朱貴に叩き付けられれば戦意は薄れると思うけれど…その逆で、更に戦意を強めていて。

嬉しそうだ。
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