シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
――強くなるためには痛みは必要だ。もう少しでコツが判りそうだ。さあ、朱貴、もう一度頼む!!
なびく黒髪。
洗練されていく身体の動き。
伊達に周涅の妹ではないと言うことか。
紫茉ちゃんは面白い子だ。
思い込んだらぶれない。
その強さと美しさは、彼女の強い意思故のことなんだろう。
紫茉ちゃんの感情は裏表なくて直球だ。
だからこそ、ワケアリ朱貴は惹かれるんだろうか。
紫茉ちゃんはイイ子だ。
芹霞を本当に好きなのも判る。
僕を含めて皆を好いていてくれているのも判る。
――玲、あたしだって…芹霞や皆を守りたいんだ!!! あたしは…櫂を勝たすことが出来なかった!!! 芹霞の力になれなかった!! だから今度こそは!!!
拳を交えれば、紫茉ちゃんの覚悟がどれだけ本気が判るから。
――道具として利用などされるものか!!!
そして紫茉ちゃんも、僕の本気が判るだろう。
強くなりたい。
その思いで、僕達は結束を固める。
いわば置かれている状況は、僕と同じ。
――何だか玲は、兄弟子のような気がしてきた。芹霞同盟でも組むか。
同志、戦友…そして恋敵。
休憩中、こっそり言われた。
――ああそうだ。なあ玲、お前の占星術(ホロスコープ)をちらりと見てたら、玲の恋愛運、恋敵が多くてその影響受け、お前自身浮き沈みあるから…芹霞をちゃんと離さずにしておけよ。それから櫂のものなんだけれど…。
――紫茉。何でどうでもいい恋愛運を見るんだ、お前は!! んん!!?
――朱貴!!!? ぐりぐり…痛い、痛いって!!
――随分と元気そうだな、あああ!!?
友情というより、好敵手として紫茉ちゃんを見ていることは…朱貴も紫茉ちゃんも判っていないんだろうな。
僕の恋愛運…不安定なんだ。
恋敵…多すぎ…。
芹霞の恋愛運はどうなっているのかな。
聞きたいけど…怖くて聞けないや。
――あたしの体術? ん…両親が死んだ時、あたしはショックで記憶喪失になっていてな、うろうろと街を彷徨っていた処で暴漢に襲われかけ…助けて貰ったんだ。
休憩中の紫茉ちゃんの過去話。
――"れでぃーす"という処にいる"クレハ"さんに。
――あまりに世間知らずで見ていられないと、護身術を教えて貰って。
――そして周涅が兄だと迎えに来て。そこから周涅にも少々。
――会いたいな、クレハさん…。れでぃーすはまだあるんだろうか。