シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「……ふん」
朱貴の嫉妬は半端ない。
確かに…僕と紫茉ちゃんの置かれている環境が普通じゃないのもある。
だけど僕が紫茉ちゃんを抱くなんてことは100%ありえぬこと。
ましてや子供が出来るなんて…
「そう言えば朱貴。子供ってどうやったら出来るんだ?」
「げほっ」
此処で聞くか、それを!!
僕は咽(む)せ込んで、涙目で紫茉ちゃんを止めようとしたけれど。
「なあ、どうやったらあたしと玲の子供が生まれてしまうんだ? いつも周涅に会いに来る、ほらあの鸛(かく)おじさんの一族…コウノトリさん達が運んでくるんではないみたいなんだ。
朱貴なら保健医だから知っていると…。そうだよな、玲?」
「僕に…振らないで…げほっげほっ…」
朱貴は僕を烈しく睨み付けた。
僕はぶるぶると必死に頭を横に振る。
「玲、お前……」
「ぼ、僕は…げほげほっ…」
「大丈夫か、玲…」
背中を摩る紫茉ちゃんを見て、更には朱貴の殺気まで飛んでくる。
「紫茉…露出狂の男に触れるな」
「露出!!?」
また咽せ込む僕。
こんなに強いのに、紫茉ちゃんをモノに出来ない朱貴。
独占欲と嫉妬は、僕以上かもしれない。
いや…ネコに妬くだけ、僕の方が上か?
「紫茉…こっちに来い。ぐだぐだ言わず、玲から離れろ。玲に長く触れると子供が出来る。だからこっちに来い」
うわ…不機嫌丸出しの、地に轟くような低声。
そして紫茉ちゃんとぽすんと朱貴の胸の中。
「なんと!! じゃあ周涅がよく言う"周涅ちゃんに触れた女の子は、皆妊娠しちゃうよ"…というのは、本当なのか!! 男はそうなのか!!?」
「僕、そんなナンパ男じゃ…「だけど…煌と芹霞は手を繋いでいたけど、煌の子供…いないようだよな。櫂とも…かなり接触してたし…」
ひくり。
「芹霞に関して考えれば、誰の子が生まれてくるか判らな「僕の子だ!!」
「阿呆か、お前…」
ムキになったら朱貴に嘲笑された。
「なあ。こうしていたら、朱貴との間に子供…出来ないのか?」
じっと濃灰色の瞳を覗き込んだ紫茉ちゃんに、朱貴が妖しく笑う。
「………欲しいのか、俺の子供…」
放たれるのは…朱貴の艶。