シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
何の為に僕は、芹霞との接触を禁じられている?
何で僕はこの体育館に居ると思ってる?
"男"として、もっともっと僕は強くなる為に。
誰もが目を瞠(みは)る"変化"を得る為に。
それに、僕の3倍の頬を賭けて、氷皇を失望させてはいけない。
それに窓から飛び込んだ青い紙。
まだ解いていない青い紙。
彼に聞きたいことはまだ山にある。
芹霞を禁じられているのは稽古中だけというのなら、せめてその間だけでも、自分に厳しくしよう。
堪えれば、きっと解禁時の悦びは倍だと思って、此処は我慢しよう。
だから、ごめんね、芹霞。
今は遠ざかる僕を許して。
その分、僕は強くなるから。
肉体を目覚めさせて、闘いの勘を養うから。
耐える覚悟をした僕を見て、紫茉ちゃんが泣きそうな顔で励ました。
「玲、付き合ったばかりで辛いだろうが。あたしも芹霞に逢えないで辛いけれど。もう少しで会えるから、今は我慢しような!! あたしも今は我慢する!!」
微妙に…僕への対抗心が見えるんだろうけれど…本人は気づいていないらしい。
「玲がどれだけ頑張って強くなって、"男"磨いているか、どれだけ格好いい男か、あたしからもきっちり、もれなく芹霞に伝えてやるから!! そんな玲に愛されて芹霞は幸せ者だと、玲との交際をぐっと後押ししてやる。
芹霞同盟の仲間であるあたしに、どどんと任せておけ!!」
嬉しいけれど…何だろう、素直に喜べない。
僅かな不安があるのは何故…?
その不安が的中するのは、思いがけず芹霞達が体育館に現われてから。
思わず身体が芹霞に向き、弛んでしまう顔。
朱貴に怒られる僕とは対照的に…休憩に入っていた紫茉ちゃんは、僕の存在なんて忘れたかのように、芹霞といちゃいちゃ2人だけの世界。
気になる。
あっちが気になって仕方が無い。
僕が見たかった笑顔は、紫茉ちゃんに向けられて。
僕は此処にいるのに、紫茉ちゃんとばかり。
芹霞、君の目には僕は映らないの?
ねえ…僕頬が治ったんだよ、それも判らない?
君は誰に会いに来たの?
紫茉ちゃんなの?
僕は?
僕はどうでもいいの?
「玲ッッッ!!!」
謝って邪念を取り払い、新たなる特訓に励めども。
芹霞――…
ねえ何で泣いているの?
何でその涙を拭うのは僕じゃないの?
「玲ッッ!!!」
やばい!!!
朱貴の怒りはかなりのもので。
紫茉ちゃんと芹霞が仲良すぎるのも原因の1つだろう。
そして…とうとう追い出してしまった。
追いかける余裕がないまま、稽古に励み続ける僕。
紫茉ちゃんが参加してきて、僕は休憩に入れたけれど。
もうソコには芹霞の姿はなくて。
寂しかった。
凄く……。