シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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眩しい陽光が体育館全体に注ぎ込む。


ぶっ通しの夜稽古12時間以上。

さすがに疲労と眠さが身体に重くのしかかってくる。

しかし弱音だけは吐きたくない意地だけで、身体を動かし続けていた時、


「よし、今日の処はここまで」


短くなった煙草を指で消し終えた朱貴が、終了宣言を下した。


「ということは、次もあるのか?」


期待にきらきらとした瞳を向ける紫茉ちゃんに、


「気が向けばな。何とか見れる形になった今の状態を、維持出来ていないならば、俺は速攻稽古を放棄するが」


"基礎鍛錬を怠ることなかれ"

それは煌が緋狭さんからよく言われていることにも繋がる。

怠ってばかりいる煌は、その分のツケを過酷な修業…身体酷使にて支払っているようだけれど。


――こんにちは~。遊びに来たよ~。……あ、煌も居たんだ。って…あんた何でそんなにストーブに張付いてるの? 風邪? 馬鹿がとうとう風邪!!?


――違うよ。緋狭姉にさ…基礎鍛錬のサボリすぎだって、手足に3tの重りつけられて真冬の海に沈められた。ボロい神崎家は隙間風が多すぎて、風呂入ってもまだ寒いだろうから…櫂の家で風呂入ってあったまらせて貰ってるんだ。


――はあああ!!? 今日は東京マイナスだよ!!? 緋狭姉何してんのよ!! 煌、今あったかい飲み物作ってくる。玲くん、お台所借りるね!!!


………。

ツケを支払えるのは煌だからだろう。

普通は…支払えるどころかよくて借金の雪ダルマだ。


朱貴が体育館から出た間に、僕と紫茉ちゃん散らばるボールをカゴに拾い集めて、後片付けをしていた。


「なあなあ玲…。お前、電気の力…凄いの出せるようになったろ?」


つつつと紫茉ちゃんが僕の傍にやってきて、少しはにかみながら言った。


「奥義みたいにして、技の名前…つけないか? 稽古の記念にさ」

「名前?」


そんなこと考えてもいなかった僕は、それも面白いかもと思い始めた。

それはある意味、詠唱と同じようなものだ。

形無きものに輪郭を与えるのは、名前という言葉だ。

名前という"呪文"によって、あの力が解放された感覚を楽に想起出来るようになれば、あの力も楽に喚起出来るようになり、緊急時には役立てるかもしれない。


技…。

奥義…。


………。

僕の頭の中に、色々なゲームで出て来るような、技名が浮かんでくる。


「電気…ボルト"? 電気より雷系としたら…"サンダー"? "攻撃は…"アタック"だろう?」


そうぶつぶつ呟いていたら、紫茉ちゃんがぽんと手を叩いて。


「サンダーボルトアタックはどうだ?」


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