シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ち、違うから。別にやましいことは…」
「君がしなくても、"された"んだろう!!?」
芹霞は静かに溜息をついて。
「現われた久涅を計都が迎えに来た。
ただそれだけだよ。別にやましいことは…」
だけど微妙に目が泳ぐ芹霞。
………。
君の演技は下手だよね。
言えばいいじゃないか。
不可抗力だったって。
誰も芹霞を浮気者と罵っているわけではない。
だけど君を詰る前に。
「ごめんね…1人にしてしまって…」
僕は芹霞を抱きしめた。
そう、それが一番恥じ入ること。
過信し過ぎていた、僕は芹霞の危険を察知出来ると。
「玲くん……」
芹霞が、僕の背中の服地をぎゅっと掴んで。
「去り際…久涅に言われたの…。
サンドリオン…
夢の国に行く為の、運命の時間が来るって」
芹霞の言葉に…
「サンドリオン…?」
僕と由香ちゃんと顔を見合わせる。
「"心"を奪われるなって…」
僕達が知るサンドリオンは、黄色い蝶関係の七不思議。
「久涅は…何か関係在るのか?」
少なくとも、"サンドリオン"という単語に意味があることを知っている。
黄色い蝶は目を抉る。
しかし目ではなく心の奪取を、警告しにきたというのか。
久涅が黒皇だとしたら。
芹霞の前に現われたその動きは必然的事象なのか。
それとも、ただ単に…芹霞への恋慕故のことか。
そしてどうして僕は、久涅の気配を悟れないのか。
S.S.Aで宝石店から出た芹霞を追いかけ探し回っていた時、久涅が一緒にいて僕は驚いたことを思い出す。
まだ僕は、久涅の気配を察知出来ないというのか。
代わり映えなく、久涅の気を感じられない自分にイライラしてくる。
力の差を見せつけられているようで、無性に悔しくて。