シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
2人が抱き合う寸前。
グイッ――…。
「な、何をするんだ、朱貴ッッ!!」
「玲くん!!?」
嫉妬と独占欲の強い男に想われると女の子は大変だ。
だけどね、そんな男同志だから、示し合わせなくても通じるものがある。
「玲、第一保健室を開けた」
「ありがとう。じゃあ僕"達"はそこで仮眠してくる。ということで、仮眠に協力してね、"彼女サン"?」
「え? え?」
「紫茉、お前も身体を休ませろ。よし奥の部屋で仮眠だ。俺と」
「え? え?」
「紫茉ちゃん!!?」
「芹霞!!?」
「「さあ…仮眠しないと」」
僕と朱貴の声が重なり、そして問答無用に朱貴は紫茉ちゃんを、僕は芹霞を肩に担いで、互いに反対の方向に歩き出す。
「あ、これいらない」
ポイとクオンを引き剥がして、僕は由香ちゃんに放った。
クオンが反撃を試みたけれど、僕はそれを片手で制する。
素早さは――朱貴に訓練された。
ネコ如き、僕の相手にはならない。
「クオン。お前はこっちにこい」
朱貴がクオンを呼び寄せたのは意外だった。
遠ざかる朱貴の声に、いきりたったネコは悔しそうに鳴いて、僕の背を向け…またこちらを振り向いて睨み付けて、朱貴の元に行く。
朱貴の命令には逆らえないらしい。
「じゃあ由香ちゃん、1時間後」
ドアを閉める間際、由香ちゃんの何とも言えない笑い声が響いた。
「むふ。むふ。むふふふふふ!!!」
そして――
「師匠、頑張れよーーーッッ!!!」
底知れぬ不安を抱いた僕は、乾いた笑いを返すしかできなかった。