シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「僕のこと…興味ない?」
すりすり、すりすり。
「いや…そういうわけでは…」
「僕のこと…信用出来ない?」
あたしはぶんぶんと頭を横に振る。
「じゃあ教えて? 君は何で泣いちゃったの?」
あたしが涙したことに気づいていた玲くんは、どうしてここまで気にするのか。
気にされて嬉しいあたしと、不可解に思うあたしがいるんだ。
「教えて、芹霞」
言っていいのかな、これ。
「教えて、君の心を知りたいんだ。言葉がないことで擦れ違うことだけは絶対に避けたい。同じ轍は二度と踏みたくないよ、僕。だから言って」
あまりに切実にそう言うから。
「………。仲…いいよね、紫茉ちゃんと」
「え?」
玲くんはひっくり返った声を出した。
「紫茉ちゃんと…急接近…みたいな?」
ぼそぼそ、ぼそぼそ。
「紫茉ちゃん…美人さんだよね。強いし性格いいし。あたしはただの役立たずで…、玲くん…紫茉ちゃんとの方がお似合いだなって…」
言葉尻はもう声にならない小さな響き。
悲しさと恥ずかしさが入り交じり、気分が憂鬱になった。
言ったのを後悔した。
玲くんから応答はない。
嫌だ、もしかして…図星だったとか?
それとも重すぎて呆れられちゃったとか?
「ねえそれは……」
熱に浮かされたような掠れた声を出した玲くんは、すぐに考え込むような姿勢を見せた後、
「………。待てよ? 前例がある。これだけははっきりさせておかないと。ねえそれは…紫茉ちゃんにとって、君より僕がお似合いだからって哀しくなったとかじゃなく?」
………。
「それだったら、あたしが紫茉ちゃんに恋愛感情抱いているみたいじゃない。あたしと紫茉ちゃんは友達だよ?」
何でそうなる?
変な玲くんだ。
「僕は?」
「か、かかか…"彼氏サン"」
何を今更、ああ…また噛んじゃった。
「紫茉ちゃんは?」
「お友達」
おかしな質問に、怪訝な顔をしながら答えると、
「!!!?」
玲くんは…それはもう綺麗に微笑んだんだ。
そして両手を伸して、あたしをぎゅっと抱きしめた。