シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
玲くんの身体から、甘いムスク系のボディソープのいい匂いがする。
あたしの脳裏には、体育館で見せてた…玲くんの半裸が浮かび、何だかあの逞しい裸で抱きしめられているような気がして、無性に身体が熱くなってきて。
更に視界にベッドが見えると、どうしても思考は変な方にねじくれてしまう。
やばい。
やばい。
煌のエロが移ったかも。
「妬いちゃったの…?」
その声は唐突に。
直接耳の…鼓膜に送り込まれた熱い声に、びくりと身体が震えた。
「僕が…芹霞じゃなくて紫茉ちゃんを選んで、紫茉ちゃんと仲良くなるんじゃないかって…不安になったの?」
………。
端的に言えばそうだ。
嫉妬。
だからコクンと頷けば、
「ああ…もう、可愛いな本当に!!!!」
喜びに上擦ったような声が聞こえ、胸板に顔を押し付けられたあたしは、窒息しそうにもがいているけれど…それでもお構いなしの玲くんは、あたしの頭に顎を乗せながら一層抱きしめ、そしてあたしの後頭部を大きな手でまさぐった。
よしよしとでも撫でているように。
「ああ…本当にもう!!!
こんなに僕を悦ばせて煽って…どうするんだよ!!!」
怒っているような、褒めているような…判断困難な声を発した玲くんは、そっと身体を外すと、至近距離にて顔を覗き込んでくる。
「育っているんだよね、僕への…感情」
真剣だけれど…とろとろに蕩けたような鳶色の瞳。
その奥にはゆらゆらと何かが揺れている。
「僕を…紫茉ちゃんにとられたくない程には」
こくりとあたしが頷くのを見ると、玲くんは顔を斜めに近づけてきて…あたしの唇に啄む様なキスを一回落す。
「ん……。ああ、駄目だ…もう一回…」
本当に嬉しくて仕方が無いというように、二度も敢行。
唇を離した玲くんは、今度はおでこをくっつけながら、唇が触れ合うか触れないかの距離で言った。
「だけどまだ僕が君を想う気持ちには追いついていない。判る? 僕は…君が思っている以上に、君が好きなんだよ? 君しか見えていない。他の女の子とどうなるなんて、君が心配する必要は全くない。僕を信じるんだ」
紫茉ちゃんの家では癒し系の小動物だった玲くんは、あたしを赤くさせるようなことを平気で言う。
ほっぺが治った玲くんは、ただの可愛いリスじゃない。
「僕は紫茉ちゃんと朱貴を応援しているしね。身体の対話っていうのは、結束を強めるんだ。紫茉ちゃんと同盟結んだよ、芹霞を守りたいという。恋愛感情はない。これからもね」
ドキドキ感が半端ない。
口から心臓がでちゃいそう。
絶対今、あたしは茹で蛸みたいな顔色で、マヌケ面をさらしている。