シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ここまで…馬鹿にされるとはな…」
ぎりぎりと…歯軋りの音まで聞こえてくる。
「だけど――……
同情など、代理など、安全圏など…言わせないよ、僕は」
突き刺すように真っ直ぐにあたしを見た玲くんは、自嘲気に言い捨てた。
ねえ、玲くん。
「芹霞。意識させてやるよ、僕がどれだけ男かということを。そうすれば久涅が付け入る隙もなくなり、何より君自身が、もう…そんなことに惑うことはないだろう? そういう要素があったから…惑っていたんだろう?」
考え込んでいたあたしに…怒っているの?
違う、あたしは玲くんが男じゃないからとかいう理由で考えていたわけじゃないの。
それは、剣呑な空気に…ひりついた喉からは出てこない。
「僕が男だと知れば…僕だけに惑ってくれるだろう?」
なのにどうして、そんなに悲哀に満ちた顔をしているの?
玲くんは――
あたしを片手で突き飛ばすようにしてベッドに押し倒すと、上から覆い被さるようにして、あたしに口付けてきた。
あたしの両手を片手で縫い止め、性急な舌遣いであたしの唇を割って侵入してくる熱い玲くんの迸(ほとばし)りに、あたしはくらくらした。
抵抗しているのに、ぬめるような舌が、あたしの舌と絡み合えば…あたしから艶めかしい喘ぎ声を引き出していく。
貪られるような恐怖と喜悦感に、心身が分離しそうだ。
熱い。
熱い。
玲くんの身体は、その唇は。
いつものにっこりほっこりの玲くんではなく、あたしの抵抗などモノともしない1人の男だということを再認識させる。
そんな玲くんに求められているのは――
あたしの身体?
あたしの心?
あまりに玲くんの動きが強引すぎて、一方的すぎて…あたしの心が追いつかない。
待って待って。
そんな抵抗は玲くんに抑えつけられて。
身体だけが…玲くんの動きに従順になっていく。
嫌でもあたしは女だということを認識してしまう。
だけど気づいたんだ。
そんなに強引なキスなのに、あたしの髪をまさぐる玲くんの手は、いつも以上に優しくて。
震えていて…。
ああ…言わなければよかったと、あたしは後悔した。
言えばいいっていいものではない。
言葉は魂が宿るモノ。
玲くんの心の琴線に触れるものだったんだ。
それがあたしの口から漏れた時、それはきっと…あたしの言葉として玲くんには聞こえて、爆発してしまったんだろう。
我慢の玲くんが爆発するなんて、余程のことだ。
それを作ったのはあたし。