シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

「…っ…はっ…僕を…っ、受入れろよっっ!!」


傷ついた玲くんがいる。

久涅の宣言だけで、矜持を崩した玲くんがいる。


あたしが嫉妬したと判ってあんなに喜んでいた玲くんは…烈しさをもって、自らの愛を叫んでいるような気がする。


ああ…なんて愛しいんだろう。

あたしはそう思った。


玲くんが復唱した言葉は――


"同情"

"代理"

"安全圏"


玲くんの不安愁訴だったのだろうか。


どうして?

あたし達…始まったばかりなのに。


玲くんの心が掴めそうで掴めない。

交じり合いそうなのに微妙に食い違う。


あたしが判らない何かが…根本的な何かが、玲くんを苦しめているのが判る。


判りたい。

判らせて欲しい。


ねえ――

それが愛だよね?


愛であるのなら、互いを判り合う為にどうすればいいのか…それは本能が知っている。


あたしは一切の抵抗をやめた。


そして徐(おもむ)ろに玲くんの背に手を回すと、玲くんはびくっと身体を震わせて動きを止めた。


青ざめたその顔。

驚愕に見開かれるその目。


正気に返ったらしい彼の、それまでの"夢"の名残を漂わせるのは…唾液で濡れた唇。


それから玲くんはどうするのかあたしは判る。

また玲くんは我慢しようとするんだ。


あたしの前から消えようとするんじゃないだろうか。

そんな一抹の不安が湧き上がる。


もっと心をぶつけていいのに。

もしも玲くんがあたしを求めてくれるのなら、あたしで何かを訴えようとしているのなら、あたし…受け止めるから。


「いいよ…玲くん…」


あたしは微笑んだ。


「欲しいなら…上げる」


こんな身でいいのなら。
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