シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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あたしは、由香ちゃん百合絵ちゃんと…かつて応接間だった、今はソファのみとなった場所に待機して皆と雑談をしていた。

すると間もなくドアが開閉する音がして、玲くんと紅皇サン、紫茉ちゃんが揃ってやってくる。


紅皇サンの肩にはすました美猫。

少し前までの、残念な"ひらき"の名残は何もない。


「お待たせ」


にっこり笑う美少女"玲ちゃん"は、力を使ったというのに…顔の色艶はよく元気そうで、その玲ちゃんが治療したんだろう2人プラス1匹も、先程までの深刻そうなぐったり感はない。

玲くん凄いや。


「ごめんな、芹霞。またあたし…熱出してぶっ倒れてしまったみたいで。今回は朱貴だけではなく玲にも迷惑かけてしまったんだな…」


「ニャア」


威張ったようにニャンコが鳴いた。

皆一瞬紅皇サンの肩を見たけれど、ふさふさネコはただあたし達をじっと見ているだけだったから、あたし達はネコを無視して会話を続ける。


「弱くて弱くて本当に自分が情けない。ありがとう、玲」


ぺこりと頭を下げると、玲くんは柔らかく微笑んだ。


「僕はほんのちょっとだけ。君を治療したのは朱貴だよ? いつもの通り、ね。感謝なら朱貴にして? 彼のおかげで君は元気になったのだから」


謙虚で優しい玲くんに、好感度レベルUP!!!

玲くんだけに謝罪する紫茉ちゃんを面白く思っていないらしい紅皇サンは、見るからに不機嫌そうに髪を掻上げていた。


「朱貴、いつもありがとう」

「………」


黙って顔をそむけているのはわざとなのかな。

何だかこんなに大人なのに、子供のように拗ねているような様は微笑ましく思えてしまって…思わず口元を弛ませたら、


「お前のたるんだ筋肉、鍛えてやるか?」


あたしに向けられていた、冷ややかな濃灰色の瞳。


………。

何 処 の 肉 で す か ?


「じ、自己鍛錬に励みますので、お心だけで結構です」


慌てて口元引き締めて頭を下げた。

危ない、危ない。

まるで怒りかけたお姉ちゃん相手にしているみたいだ。


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