シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「だけど紫茉ちゃん、紅皇サンと玲くんが居てよかったね。体調は大丈夫?」
「ああもう大丈夫。本当に朱貴と玲が居てくれてよかったよ。あたしは人に恵まれているなあ」
「ニャア」
またニャンコが自慢気に鳴いて、また紅皇サンの肩を皆で見たけれど、ネコはこっちをただ見ているだけだし、またあたし達は何事も無かったように会話に戻る。
「どうでもいいネコのことは放って置いてさ、これからのことなんだけど」
パソコンを持った由香ちゃんがあたし達に言うと。
「ニャアニャア!!!」
騒いだニャンコが飛び上がり、由香ちゃんのほっぺにネコパンチ。
その反動を利用して、あたしのほっぺにもネコキック――
「自分も活躍したのだと言いたいんだろうけど…」
の連携技は、あたしのほっぺに至る前に、玲くんによって隔てられた。
パシ。
クルクル…。
パシ。
クオンの蹴られた足を素早く受け止め、その手で宙に放り投げるようにしてふさふさな身体を回転させ…そして手足を片手で掴んで捕獲に成功したのは、僅か数秒…実に鮮やかで見事なものだ。
「だけどさ八つ当たりするなんて…」
そして声色と共に、場の温度を下げたのは――
「許せないね、僕の芹霞と弟子をさ…」
眼鏡の奥の鳶色の瞳を細めながら…えげつなく笑う玲くんと、
「許せませんね、坊ちゃまの嬢ちゃまとそのお弟子さんを」
短くとも存在感ある指をバキバキ鳴らす百合絵さんで。
「坊ちゃまの手を煩(わずら)わせずとも、此処は藤百合絵。全力で"報復"に行かせて頂きます」
「フーッッッ!!!」
やばいぞ、百合絵さん荒ぶって、全身から湯気が立っている。
「百合絵さん、どうかクオンを助けて? ただ気まぐれで面倒くさがり屋で肝心なトコロが残念なだけの、(多分)悪いニャンコじゃないと思うから…。それにクオンがいなくなったらあたし…寂しいもの(首元が)」
「ニャアアン……」
クオンのあたしを見る目がウルウルしているような?
「ぷふ~。ならば優しい嬢ちゃまに免じて、今日の肉料理にするのはやめましょう」
に、肉料理にしちゃう気だったの…。
「代わって毛を刈ることでお仕置きとしましょうか、そのふさふさをばっさりと。ここにいい鋏もカッターもあることですし」
「フギャーッッッ!!!」
凄い。
クオンの全身の毛が、これ以上ないという程ぶわりと逆毛だった。