シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「ふふふ、まぐれですまぐれ。皆の優しいお情けのおかげです。あ、そうなんですか? それは楽しみです。ええ……紫茉さんとは、古くからの友人なんですが、あの時紫茉さんお休みされていたので…だから晴香さんには話さなかったのだと思います。ふふふ、ではこれからよろしくお願いしますね」

玲くんは話術も優れているようだ。

上流界を経験しているからなんだろうか。

紫茉ちゃんのように言い淀んだり、詰まったりしないことに…紫茉ちゃんは驚いている。


「それで…というわけではないのですが、紫茉さんから色々お話を伺っていまして、以前特待生となられた紫茉さんの先輩をお誘いされたという塾に、私も行ってみたいと思いまして。是非、その場所を教えて頂ければ…。あ、そうなんですか? 写真? いいですよ? 本当ですか? 嬉しいです。はい、それでは是非。北新宿の駅ですね? はい、では30分後…お会いできるのを楽しみにしております。……ふぅっ」


最後に疲れたような溜息を零して、玲くんは電話を切った。


「爆弾のようによく喋る女の子だね。僕も呑み込まれそうになって負けじと喋ってしまったよ。住所は直接案内してくれるって。北新宿の駅で待ち合わせした」


そう苦笑する玲くん。"爆弾娘"にミッションを完了できるのは流石だ。


「珍しいな、晴香自ら。玲がイケメンだと知らないクセに、そこまで尽力するのは」

イケメン好きらしい晴香ちゃん。


「"ミス桜華"の肩書きは偉大らしいよ。写真を撮らせてくれたら案内してくれるって。条件つけられちゃった」

「あいつ…また売りさばく気か。翠の写真もストーカーして撮りまくり、かなり大もうけしたからな。味をしめたんだな」

「そんなに人気だったの、小猿くん」


驚きはしないけれど、そこまでの人気ぶりとは意外。


「将来有望な"凛々しい若侍"…みたいらしい、高等部のお姉様方には。女にへらへらする奴じゃないから、ちょっと身体を触られただけで"無礼者"と怒鳴るし、"上手く作れなかったんですが"とくれる手作りお菓子を、"そんなものを寄越すのか"って怒る奴なのに、晴香がいつの間にか、あの手この手で盗み撮りした…あたし達に向ける笑顔の写真がギャップありすぎて可愛いと…高価で闇取引されていたらしいぞ」

人気の小猿写真だったらしい。


「玲の場合、女装していても…突如消えた謎の美少女、ミス桜華だ。一縷みたいにミステリアスさにプレミアがついて。どうにかお近づきになりたいと…前に電話で話していたことがある。玲が男の格好していたら、どんな騒ぎになっていただろう。朱貴が赴任してきた時以上かな?」


「以下だ!!」

「な、ななな突然現われて、何でゲンコツ!!?」


晴香ちゃんは…最強の紅皇さんの写真も売りさばいていたのか。

気づけば、シャワーを浴び負えた紅皇サンが立っている。

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