シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

「話はついたのか?」


まだ濡れている煉瓦色の髪に、咥え煙草須姿は、実にセクシーだ。

滲み出る大人の色気に、免疫ないあたしはドキドキしてくる。


「何だ、俺がどうした?」


ぽーっとなりながら紅皇サンを見ていたら、間に割って入ったのは玲くんで。


「とりあえず僕は北新宿に行くけど…由香ちゃんどうする?」


紅皇サンを隠しちゃった。


「ん……。さっき師匠と打ち合わせしたことを進めたいんだけれど、師匠居ないとネットも電源も繋がらない状態だし、邪魔にならない程度に師匠についてパソコンしてるよ」

「判った。で、朱貴……」


玲くんの前に差し出したのは青い手紙の紙飛行機。

玲くんの綺麗な顔が、ひくりと引き攣った。


「シャワー室の窓から飛んで来た」


『ミス桜華のレイチャンへ

10:00に予約しているからね☆

受付で名前を言ってね~。


《桜チャン情報~♪》

芹霞チャンの家付近でう~ろうろ☆

何をしてんだろうね~?


あ、それから振り込みありがとう。

実はね、


…続きは、待て次号!!!
☆⌒ヽ(´ε`)チュッ(´з`)ノ⌒☆』



「誰も…次号なんて待ってないから。むしろこの号で強制終了して欲しいから。ちゅっちゅしなくてもいいから!!! そんなもの、迷惑なだけだから!!!」


玲くんが…壊れかかっている。


「何で、途中で終わってるんだろう」


あたしが首を捻れば、


「師匠、"実はね、"の句読点が、すっごいわざとらしい気がしないか? 妙に"何か"不安を掻き立てるんだけれど」

「僕はちゃんと、今までの利息と、その1割増3回計算して振り込んでいるし、難癖つけられる覚えはないからね!!」


玲くん…悪徳金融者への返済に、幾ら振り込んだの?


「玲、あたしは桜を探しに行く」


紫茉ちゃんがそう言った。


「芹霞の家に行ってみる。そして桜がいるようなら、正気に戻して連れ帰る。せめてこれくらい、やらせてくれ」

「少し稽古したからって調子に乗るなド阿呆が」


「朱貴、それでも…あたしは桜を…」

「……俺も行く」


嫌そうに、しかしそう言い切ったのは紅皇サンで。


「いや、別にあたし1人で…」

「俺が一緒だと嫌とでも言うのか、あ゛あ゛!!?」

「痛っ…いや、そういうわけではなく…」

「じゃあどういうわけだ、言ってみろ!!!」

数秒後、紫茉ちゃんは項垂れるようにして。


「朱貴と神崎家に行ってくる」


そんなに紅皇サンとのお出かけが嫌なんだろうか。

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