シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
同じことを久涅が警告をしに来た。
忘れるなということ?
何でそれを久涅が知る?
"サンドリオン"
その言葉を、久涅は何故使ったの?
「あと…3日、だからか」
紅皇サンは険しい顔をして、意味深長な言葉を小さく吐く。
「3日…って何だい?」
由香ちゃんが怯えたように聞いた。
「黄色い外套男に…言われただろう? 13日以内だと」
どくん。
具体的な不穏な限定語に、あたしの心臓は跳ねた。
13日以内。
確かにあたしは宣告を受けていたんだ。
「13日…そしてそれは、僕達が氷皇から自由を許された期間であり、コトの始まり。そして確か…榊がやられた最初の日、氷皇も"鱗粉"を見つけていた…。
最初と変っているモノと、変らぬモノと…混在していないだろうか、状況は。変化しているものは本当に同一のものなのか? 何で…突然此処に現われた氷皇は、あんなことを言った?」
独りごちるように言う玲くんが、続けて反芻するように言ったのは…あたしが寝ている間に蒼生ちゃんが言い残した言葉らしい。
――噂は…火のない処には生まれない。
――必ず、"何か"があるから生まれるもの。
――何がどう変化するものか…それは興味深いところである。
「七不思議を…調べ直せ、そういうことか」
そして玲くんは由香ちゃんに向き直った。
「由香ちゃん、またネットから噂を調べて。塾が終わったら、実際追ってみよう」
そして天井を仰ぎ見ながら、玲くんは言った。
「その為に…僕は力が必要だったんだ。得意分野の拡張と、それ以外の面でも。多分…その為に氷皇が現われた」
玲くんは気づかない。
その玲くんの呟きに、紅皇サンが…静かに、満足気に笑っていたことに。
「黄幡会や久涅が動き出したということは、時間が…限られているということか。何の"時間"だ?」
玲くんの頭の中には、今…何が駆け回っているのだろう。
「もう一度、初心にかえろう。
これが真の…"原点回帰"、だ」
玲くんは固い声でそう言うと、握った拳にぎゅっと力を込めた。