シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
心の中に行くことは不可能じゃねえ。
確かに、一握りの人間には違わねえし。
その導き手となれるのは、七瀬とその兄の周涅。
そのおかげで俺は…玲を助ける為に、人様の心の中に潜れたんだ。
そこには先陣切った玲とはまた別の入口から来た、櫂達が全員集っていて、結局全員、1つの場所に集合した。
玲だって…2人居て、それを認識したあいつは、1つに合体した。
夢だから。
心の中だから。
だから可能な…ファンタジー世界。
そして俺達は。
そんな非現実的なことも、素直に真実…現実に起きた事象として許容出来ている。
あの場所から帰ってきても、普通の夢のように…時が過ぎれば一過性で消える幻の記憶にはなりえなかった。
櫂の言う…現実世界ではないと自覚出来る"明晰夢"状況だったあの時間は、はっきりとした現実の記憶になり、今も引き継がれているんだ。
それと、非現実的なことを受入れている今は、どう違うよ?
同じじゃねえか。
此処に至る入口が違っただけで、あの雑多な世界を受入れられるのなら、この世界だって許容範囲内となる。
心の中にある世界。
そこに自在に出入り出来るというのなら。
心に眠る記憶は情報の宝庫として、アホハットが情報屋としてやっていけることも判る気がする。
表向き情報屋。
裏では…。
「なんや、ワンワンはん。その胡乱な目は」
「お前…本当に五皇なのか? どう見ても、櫂の過大評価としか俺、思えねえんだけれど。小猿はどう思う?」
「う~ん。聖は…、変な暗号メール紫茉と俺に送り付ける、クイズ好きな…ヘンテコ貧乏人のイメージが強いからなあ…」
「ヘンテコって、何でやねん!!!」
「ああ、そう言えば暗号のメールで木場に来たんだよな。つーかさ、暗号って…氷皇も好きだよな。真似か? 強さで敵わねえからって、真似っ子か? オリジナル性がねえよな。だから胡散臭くなったのかな」
「ひーちゃんがオリジナルや!!! ひーちゃんの何処が、胡散臭いねん!!!」
「うーん。アホハットは偉大さが全然感じられねえんだよな」
「失礼な!!! よく見てみぃ、ワンワンはん!!! 神々しいこの姿を!!!」
「うーん、やっぱ偉い奴に思えねえよな」
「うん。それなら周涅の方が強そうに思うよ。勿論、俺にとって兄上と朱貴に勝るものはないけれど」
「無視せんといて!!! 哀しいわ…。おおい、おおい…」
「「やっぱ…五皇なんて、勘違いじゃね?」」