シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「あ!!!? 前!!? 何で前代がしゃしゃり出て、今の五皇を縛るよ!!?」
「ほら、僕の言った通りじゃないか!!」
ぼちゃん、ぼちゃん。
飛び跳ねるな、頭がぐらぐらする。
「だが」
櫂は依然厳しい顔で続ける。
「黄皇は…死んでいる」
頭の揺れは止まった。
櫂は一歩前に足を踏み出して、怪訝な顔で訊く。
「死んだ黄皇に代わって、今の五皇に氷皇が加わったはずだ。黄皇というのは、死んでも尚、今の五皇を縛るくらいに延々と続く…そんな持続的な力があるとでもいうのか?」
アホハットは、薄く笑いながら言った。
「それまで混沌としていた五皇の世界に、明確な…色という秩序を与えたのは、黄色。黄色はそれぞれの色に特性を与えた。
白には"叡智"、黒には"無効"、赤には"慈悲"、緑には"変化"、青には"孤高"。
そして自らの色は、"自律"とした」
それは、櫂にとって明確な返答になってなかったらしく、もどかしげな表情を見せたが、少し目を伏せ考え込んだようだ。
「"自律"…。行動の自由に制限をかける…か。それが黄皇の力…。
しかしそれが強大であったとしても、今の五皇が複数束になって抗えば…」
「五皇は…抗うつもりはない」
何処までも淡々とした口調。
「黄の力は確かに強い。前五皇の主席たる奴の力は、紅皇や氷皇の力に勝るもの。だがもしもその力弱く、例え末席であっても…他五皇は、抗う気などさらさらないだろう」
櫂は目を細める。
「五皇の境遇を救ったのは、黄だからだ」
ゴミ以下の扱い…って奴か?
けどその黄皇もまた、"ゴミ以下仲間"だったんじゃねえのか?
仲間を救ったと、そういう事?
「救済と同時に、黄は仲間を縛り従えた。黄は…五皇にとっては"特別"な位置づけ。特に…"慈悲の赤"はかなりの恩義を感じている。全てを捨てても、"黄"の約束だけは履行しようとするだろう。
例え、死ぬことになっても」
"死ぬことになっても"
どくっ。
「縁起でもねえこと言うな!!!」
俺は思わず怒鳴った。
「今緋狭姉は危篤な状態だということ、お前も見て判ってるだろ!!? 仮にも少し前まで仲間だったんだから、人事の様に言うな!!!」
「人事だ」
アホハットは馬鹿にしたように笑う。