シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「おしっこ」
再度繰り返されるその言葉。
………。
……おしっこ?
「出ちゃう」
………。
は!!!?
ようやく…事態が掴めた。
頭で…小刻みに震えている"ぼちゃん"。
空気を読めねえKY甚だしい"ぼちゃん"。
切なる響きは感じられる。
だけどそれ以上に切実になったのは俺だ。
確かに…この怒りの火を消さなきゃなんねえ状況だったけどよ!!!
「早く降りてしてこい!!! くれぐれも、小便で、頭上から俺の怒りの火を消そうとするな!!! ……あ!!!? 動けないだって!!!?」
慌てて頭上に手をのばして、ふさふさな小さな首元掴み、目の前に持ってくれば…
「出ちゃう…」
ぷるぷる震える、水膨れ&腹膨れリス。
一応…玲の声なんだけれど。
「おしっこ…出ちゃう…」
俺は慌てて地面に下ろした。
「此処でしろ、さ、早く!!!」
すると、チビは…少しだけ、震えた頭を動かして俺達を見た。
くりくりとした可愛い目で。
そして俯いた。
「こんなトコやだ。恥ずかしい…」
か細い声で、そう言った。
「恥ずかしい!!? ド"M"のお前が、今更もじもじして何言ってるんだよ」
「こんな…公衆の面前での羞恥プレイは…僕、恥ずかしい…」
柄にもねえこと言い出して。
ふるふる、ふるふる。
"元"小動物が震えていて。
毛を剃ったら、真っ赤な顔でも出てきそうだ。
玲リスは震える声で訴える。
「僕にだって…
"男"の矜持があるんだ」
「矜持!!!? そんな体型に平気でさせておいて、今更なんだよそりゃ!!! 人間感覚捨てろ!! お前は何処をどう見てもヘンテコ動物だ。やけに現実臭い、生理的な小便くらいなら、誰も何も文句言わねえから。むしろ微笑ましく見守ってやるから」
すると、ふるふる身体を震わせ続けながら、小さい両手でその顔を覆って。
「ううっ…皆の前で醜態さらすくらいなら、
僕は潔く…
思う存分…
――"巣"でする!!!」
突如跳ね上がろうとした。
「思う存分!!? うわわ、戻るな!!! 戻ってくるな!!! 俺は、そんな汚水は頭から被りたくねえ!!」
が、重みと震えで…いつものような跳躍力が出ないらしい。
頭からずり落ちて、俺の顔面に貼り付いた。
「駄犬…死なば諸共に」