シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
レイと翠の歌に顔を引き攣らせていた煌も、笑い転げていた情報屋とクマも、元々レイと朗らかに歌って帰ってきた翠も。
人間の男達4人、小さいリスの真向かいに雁首揃えて…横一列に並んで直立不動。パート分けまでして、全員でハモっている。
壮大な…4重奏。
時折煌のアレンジが入り、歌の世界は単なる"童謡"を超える。
だけど、原曲は『りすりす小りす』。
此処までスケールの大きい歌になってくると、そこまでの拘りを持たれるあのマイナーな歌が、"リス"というキーワード以外に、大きな価値があるもののように思えてしまうのは不思議だ。
しかもレイ。
小さな両手をラジオ体操のように内外に振りながら、音楽に合わせて大きく、小さい身体を左右に揺らしている。
目を瞑っているが、満足そうに弧を描く小さな小さな唇。
振っている右手に持っているのは…爪楊枝(つまようじ)?
何で爪楊枝?
「櫂、お前も混ざれよ!!」
ちょいちょい。
煌が歌の合間に、再度片手を揺らして俺を呼べば。
「駄犬!!! 和を乱すな!! 四重奏は一致団結が不可欠なんだぞ?」
途端目を見開いたレイが、高い位置に固定した爪楊枝を煌に向けた。
かなりご立腹らしい。
…………。
あの爪楊枝は…
指揮棒(タクト)のつもりか?
此処までまとめあげたのは…レイなのか?
誰が爪楊枝を渡した?
何でこんな光景になった?
…………。
どうして…こうなった?
各人それぞれ…何か動物に喩(たと)えられる。
これは…動物達の奏でるハーモニー…?