シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


レイと翠の歌に顔を引き攣らせていた煌も、笑い転げていた情報屋とクマも、元々レイと朗らかに歌って帰ってきた翠も。


人間の男達4人、小さいリスの真向かいに雁首揃えて…横一列に並んで直立不動。パート分けまでして、全員でハモっている。


壮大な…4重奏。


時折煌のアレンジが入り、歌の世界は単なる"童謡"を超える。


だけど、原曲は『りすりす小りす』。


此処までスケールの大きい歌になってくると、そこまでの拘りを持たれるあのマイナーな歌が、"リス"というキーワード以外に、大きな価値があるもののように思えてしまうのは不思議だ。


しかもレイ。


小さな両手をラジオ体操のように内外に振りながら、音楽に合わせて大きく、小さい身体を左右に揺らしている。


目を瞑っているが、満足そうに弧を描く小さな小さな唇。


振っている右手に持っているのは…爪楊枝(つまようじ)?

何で爪楊枝?



「櫂、お前も混ざれよ!!」


ちょいちょい。


煌が歌の合間に、再度片手を揺らして俺を呼べば。


「駄犬!!! 和を乱すな!! 四重奏は一致団結が不可欠なんだぞ?」


途端目を見開いたレイが、高い位置に固定した爪楊枝を煌に向けた。


かなりご立腹らしい。


…………。


あの爪楊枝は…

指揮棒(タクト)のつもりか?


此処までまとめあげたのは…レイなのか?


誰が爪楊枝を渡した?

何でこんな光景になった?


…………。

どうして…こうなった?


各人それぞれ…何か動物に喩(たと)えられる。

これは…動物達の奏でるハーモニー…?

< 713 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop