シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


クオンの瑠璃色になった目が剣呑に光る。

馬鹿にされたと感じたからか。


「ネコを首に巻き付けて塾行けるわけないだろう? 自警団もいるだろうし、目立った行動をしたくない。嫌だったら違う方に行け」

そしてクオンは…徐(おもむ)ろに百合絵さんを見ると恐怖に毛を逆毛立て、そして紅皇サンを見て…


「あたしはいいぞ? あたしの首にも巻き付くか?」


………。

気のせい…じゃないだろう。

にこにこ顔で屈み込み、首を差し出す紫茉ちゃんの背後で、紅皇サンが殺気めいた目で、クオンを制している。


"紫茉に触ったらぶっ殺す"


とでも言いたげに。


クオンは…スクールバックの中に入って行った。


………。

気まぐれネコでも1人になるのは寂しいのは判る。

だから留守番を選択しなかったのも判る。


だけど――

普通のネコのように足で歩こうという気にはならないのだろうか。

そこまで人様に運ばれたいのだろうか。


王様ネコの考えることはよく判らない。


「凄いよ、師匠。このニャンコ、言うこと聞いたよ!! チャックは全部閉めないであげようね、酸素が足りなくなったら可哀相だし」


紅皇サンは紫茉ちゃんと仮眠する直前、玲くんが先に起きてきた時の為にと、由香ちゃんに色々指示していたようだ。

由香ちゃんが桜華の制服を着ているのを見れば、紅皇サンは元より由香ちゃんは玲くんと行動すると踏んでいたのだろう。

そして玲くんの女装用の制服一式といい、クオンが入っているのと同じカバンが後2つあることからも、あたし達3人が塾に行くことは見越されていたようだ。

紫茉ちゃんと2人きりになりたいから、"後の奴らは徒党を組んでさっさと行け"…などという意思表示ではないはずだと信じたい。

スクールバックには普通の学生らしく、桜華の教科書やら筆記用具が用意されていて、由香ちゃんのバックは更に銀の袋とパソコンまで入っている。

「この重いの、由香ちゃん持って歩くの!!?」

「今必要ないものは抜いたし、これくらいの重さ、コミケの帰り思えば可愛いもんだって」


コミケ…一体どんなトコロだ。

「それにこれくらい平気でいないと、足手纏いになっちゃうだろ? 師匠の役に立てるようになるには、普通人は基本的な…出来ることからしないと」


………。

由香ちゃんはパソコンでも玲くんの片腕になっているのに、プラスαまで考えていたのか。

あたしがのほほんと守られてばかりいる間、由香ちゃんは建設的なことを考えていたのだと思ったら、我が身がなんとも情けない。
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