シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
あたしだって、何か出来ることをしたい。
そしてそれが、あたしの腕に執拗についてぷるぷる震える…贅沢なお肉を何とか出来るなら一石二鳥だと…、あたしはクオンが入ったカバンを手にした玲くんを引き留め、あたしが持ちたいと頼み込んだ。
玲くんは渋っていたけれど…押し切ったあたしは、結構腰に来るクオンの重さに内心辟易しながら、大丈夫だと笑顔でぶんぶん振り回した。
体力作って、足腰を鍛えなきゃ。
酔っ払った煌を二階に運ぶことが無くなったあたしの身体は鈍りすぎている。
意気揚々と…あまりに振り回しすぎて、カバンの中からクオンに怒られた。
気づけば、晴香ちゃんとの待ち合わせ時間が迫っている。
交通機関では間に合いそうにもないことに気づいて焦ったあたしだったけれど、元より…百合絵さんが車で北新宿まで送ってくれる手筈になっていたらしい。
紫堂本家より皆で逃げ出した青いボックスカーが、桜華に停車して、あたし達はそれに乗り込んだ。
北新宿と中野は意外に近い。
当然紫茉ちゃん達も乗るものと思っていたけれど、
――俺は自分の車がある。
――そうか、じゃあ神崎家で待ち合わせだな。あたしは…
――お前もこっちに乗れ、ド阿呆が!!
紅皇サンのぐりぐりによって、あたしは紫茉ちゃんと同乗は叶わず。
だけどそれでよかったかもしれないと思う自分も居る。
例え玲くんが否定して、玲くんが女装姿であろうと…やはり並べば紫茉ちゃんとお似合いだとかぐだぐだ思ってしまうだろうから。
少し…冷静にならないと。
あたしは紫茉ちゃんや玲くんと仲違いしたくない。
携帯で連絡を取り合うことにして、あたし達は北新宿付近で下ろして貰う。
ずしっ…。
クオンのカバンは、思った以上に身体に響く。
「ファイト!!!」
「な、何だい神崎、突然!!」
クオンより重いだろうカバンを由香ちゃんは軽々と持ち歩いていて。
「ナッシング、マイプルプル!!!」
反対側の拳を天に突き上げた。