シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
その自警団2人はあたし達を目に留めると、1人は紅皇サンから渡されたあたし達の襟元のバッチを一瞥し、隣に居る…あたし達に向けて携帯を操作している自警団員が何やら囁いた直後、何事も無かったかのように通り過ぎた。
翻る…白い長丈の制服。
その服は、煌がBR002と呼ばれていた頃の制裁者(アリス)のものと同じもの…。
ずきっ。
あの白い制服の形を見た時、何故だか心臓に杭が打たれたかのように痛んだ。
しかしそれは一瞬で。
「胸痛いの?」
途端、心配気に覗き込んでくる…眼鏡の奥の鳶色の瞳。
あたしは大丈夫と笑った。
「異変感じたら、どんな些細なことでもいいから僕に言って。すぐに回復結界張るから」
玲くん…東京で力を使えるんだろうか。
前の時は使えなくて大変だったよね…。
心臓発作を起こした玲くん。
だけど誰もが玲くんの受入れを拒否して。
あたしは煌とそれを電話で聞いていて、もどかしく思っていたんだ。
ダレニ?
ダレトデンワシテイタノ?
電話越し、苛立ったように声を荒げていたのは…誰?
「すみません、すみません!!」
少女の声に、あたしは不可解な回想を途絶えさせた。
あたしの目の前を通り過ぎた自警団が、近くに居た有名女子校の制服を着た女の子に絡んでいたんだ。
「何だこのスカートは!!! 2cmも短いじゃないか!!! 風紀を乱すとは!!」
物陰に隠れて様子を窺ってみると、どうやら…スカート丈が短かったらしい。
2cmだけ。
「免罪符もなし!! これは粛正に価する!!!」
「ごめんなさい、ごめんなさい!!! 許して、許して下さいッッ!!」
それで連れて行こうとする。
何処へ?
「更正施設だろうね、九段下…だっけ」
2cmで、更正。
何で?
そして玲くんは、いつも以上に理知的に思える目を細めて。
「ジキヨクナール…これもその施設と関係があるらしいんだよね、確か…。理不尽な更正と関係があるらしい薬なら、胡散臭さ全開。それが市販もされていたとは、最早ただの風邪薬ではないことは明白だ」
薄く笑った玲くんは、髪を毟るように掴んで引き摺る自警団に、後ろから近付いて…素早く首に回した腕を少し動かすと、すぐに自警団は崩れ落ちた。