シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「本当にありがとうございました。ううッ…」
玲くんが助けた少女は泣きながら、御礼の言葉を言って去って行った。
玲くんの手元には、伸びた自警団から取り上げた白い携帯。
「桜の言うとおり…羅侯(ラゴウ)の、ドラゴンヘッドのマークがあるね。しかも…"虚数"放ってる…。由香ちゃん、これをパソコンに接続して、何処にアクセスしているか突き止めてくれないか。多分、電力消費分布図に照らし合わせると、位置が確定するだろう」
「師匠の予想は?」
「九段下、更正施設内。もしアタリなら、そこに…個人情報が詰まった巨大なサーバはあるはずだ」
「凄いね、玲くん。特定出来るなんて」
「木を隠すなら森の中。自警団が扱うデータは、より多くの自警団が蔓延る施設だと思うからだよ。むしろ…そこ以外にはありえない」
直ぐあった脇道に入り、その場でパソコンを広げた由香ちゃん。
「師匠が使いやすくしてくれたから、やりやすいよ」
カバンからケーブルを取出し、パソコンと白い携帯を繋げる。
「ん。師匠、ビンゴ!!」
「よし。じゃアクセス遮断(シャットダウン)して。逆探知される可能性がある」
そして由香ちゃんがパソコンからケーブルを引き抜いた時、玲くんはその携帯を反対側に折って壊してしまった。
「此の手のモノは、甘く見ない方が良い。機械は便利であると同時に…居所を知られる不便なものだからね」
にっこり。
玲くんは着飾れば着飾るほど、色気と美貌を増させる。
一見地味子だけれど、理知的な美人さんには変らない。
「どうした、芹霞?」
「玲くんはどの格好しても美人さんだけど、やっぱりいつものような茶色が良いね。安心するし、玲くんらしい気がする」
「仕方が無いんだよ。氷皇の指示だからね。黒い三つ編み…黒縁眼鏡。これが用意されているのなら、この格好は無意味ではなく…むしろ必然的事象。示唆されているんだと思う」
「何の…?」
鳶色の瞳に、鋭いきらりと何かが横切った。
「七不思議」
そして玲くんは、ゆっくりと目を細めた。