シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「氷皇は僕に言ったんだ。七不思議を荒い直せと。五皇の動きは必然。紅皇である朱貴の影には氷皇も居る。この格好は単純に個人の趣味趣向が左右される…意味ないものだと思えないんだ」


黒髪の三つ編みは、古来より"模範的女学生"イメージが固く、ましてやスカート丈やら靴下丈やらが野暮ったい程"標準"であれば、"委員長"とか"お嬢様"とか肩書きをつけたい処。

それこそが自警団の目指す女生徒の"品行方正"であるというのなら、そこに眼鏡は必須ではないだろうし、何より暗躍する蒼生ちゃんの趣味でもない気がする。

出会った時に連れ込まれたのが、怪しげなコスプレショップだったせいもあるけれど、女子高生の制服も所詮はコスプレの一種としてしか見ていないような気もするんだ。

しかし蒼生ちゃんが最初から拘っている…玲くんにさせている格好は変わりなく、"黒髪"、"三つ編み"、"黒縁眼鏡"。

そんな趣味があったのだとしたら、今まであたしなり由香ちゃんなり…現役女子高生にそんな格好をさせて楽しんでもいいと思うんだ、胡散臭い蒼生ちゃんに限っては。


「だとすれば…七不思議。僕に被害者と…上岐妙と同じ格好を、わざとさせているとしか思えない。僕達を七不思議の原点に戻させる気なのか、僕を"誘い"に使う気なのか」


七不思議…。


確かに、おかしなことはそこから始まっている。

サンドリオンと呼ばれる、黄色い蝶から始まった。


「由香ちゃん、PC切る前に…以前由香ちゃんに調べて貰った七不思議のテキストデータ開いてくれる? 桜華の猟奇事件のを出して」


桜華の猟奇事件って…"イチル様の呪い"?

………。

死んだはずの黄幡一縷が、幽霊となって上岐妙に取り憑いて、そして黒髪お下げと黒縁眼鏡の桜華女学生の首を絞めて殺しているという…確かそんな話だった気がする。

上岐妙に、一縷の幽霊が取り憑いていたら、の前提で。

一縷は黒髪お下げと黒縁眼鏡の女生徒に同様な殺され方をしたから、それを怨んで犯人に復讐しているのだと。

しかし取り憑いたと自ら訴えた上岐妙もまた、黒髪お下げに黒縁眼鏡の格好で、上岐妙だけが殺されずに取り憑かれた理由がさっぱりわからない…そんな様相。

一度桜華に、一縷らしき上岐妙が、同様な格好をした女生徒を殺しにかかった現場に遭遇したけれど、その一縷だか上岐妙だかは…誰が放ったか判らない"使い魔"だとかで、置き土産に気味悪い蛆を残して消えた。

更にクマが言うには、真実の上岐妙は10年前には殺されているはずだという。

今、誰が生きて誰が死んでいるのかさっぱり判らない。

何で復讐心が解けずに連続的な事件になっているのかも判らない。


判らない尽くしの、七不思議の1つの概要だ。
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