シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
由香ちゃんは、かつて彼女が記した原稿を内容を読み上げた。
「『4.イチル様の呪い
品川区桜華学園の女子高生ばかり襲われる猟奇事件。
首には指の痕。そして頭蓋は割られ、脳は全て奪われた!!?
被害者は全て、黒髪おさげに、黒ぶち眼鏡の…一見地味な少女ばかり。死亡したカリスマ占い師「黄幡一縷」と同じ殺され方なのは、彼女の呪いなのか!!?』」
あたしの認識と同じだ。
そして玲くんの今の格好も、"黒髪おさげ"に"黒ぶち眼鏡"…被害者と同じ。
……被害者。
「ねえ、あれから被害は…今、どうなっているんだろう?」
あれからは、それどころではなくて、七不思議なんて忘れて動いていたから、その後の動向は判らない。
「ああ…神崎が寝ている間、ネットやボクがしている本物のツイッターで見た限りでは、あれから数件事件は起ったらしいけれど…今は沈静化しているらしいね。起きていないらしい」
「へえ? どうしたんだろ? ん…? どうかした、玲くん…?」
玲くんが腕組みをして目を瞑り、深く深く考え込んでいたんだ。
「まるでスルーしてたね、僕」
眼鏡の奥の鳶色の瞳は、静かにゆっくりと開かれていく。
そこには理知的な光が灯っていた。
「眼鏡と黒髪お下げの被害者は、絞殺された…そう、ずっと思い込んでいた。ちゃんとその前に由香ちゃんが調べてくれていたのに」
「え?」
玲くんは言った。
「ただの絞殺じゃなかったね。
頭蓋が割られ――
脳が取られている」
「え!!? かなりの猟奇事件だったの!!?」
グロ!!!
「だけど物騒だ。何でこの事件、わざわざ頭割ってまで脳を持ち去るのさ!!!」
「それがキーポイントだろう。一縷の事件の模倣にしても、ただ似せただけにしても…それがネックのような気がする。それなのに…そこに重要性を見いだせずにいたとは…」
「師匠…何でこんな重要なこと、注視しなかったんだろうね。誰1人…気にしなかったじゃないか」
「原因は――多分僕だ」
あたしと由香ちゃんは、苦々しい顔をする玲くんを見た。
「"エディター"…上岐妙が、一縷の幽霊に取り憑かれた…そう聞いた時、彼女は首を絞めるという表現しかしていなかった。だから固定観念が芽生えてしまったんだよ。
彼女の訴えの状況の方を前提条件として、一縷の幽霊か憑いているか否か…そう皆に誘導したのは僕だ。嫌悪に満ちた僕は、深く彼女の言葉を捉えていなかった。そんな僕から出た言葉で、皆の先入観が変ってしまったんだよ。
つまり…七不思議は微妙に変ってしまったんだ」
玲くんは本当に悔しそうだ。