シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
しかし玲くんにとっては、それよりも気になることがあったみたいで、
「ねえ…"信者"だと、何故そう思ったの?」
相手の警戒心を解いて場を和ませる…玲くんスマイルを発動した。
晴香ちゃんの顔が蕩けたように崩れた気がしたけれど、再度見つめ直せば…何1つ変化がない。
見間違い。
玲くんスマイル攻撃も効果がないらしい。
手強すぎて、接し方がよく判らないや。
「それ…」
相変わらず翳ったままの顔で、晴香ちゃんは…玲くんの襟元に留めてある、紅皇サンから貰ったバッチを指さした。
「それの免罪符が…信者の証。東京都が販売している免罪符は、信者の証と同じもの。免罪符を購入することで支払われたお金は、黄幡会の寄付金となる。
寄付金に応じて、免罪符の効力と…信者のランクが上がるようになっているの。玲さんは最高ランク。他2人は、最低ランクの"見習い"」
「「「え!!? 同じじゃないの?」」」
あたし達は、自分のものと他のものを交互に見比べた。
だけど同じ模様が彫り込まれているし、違いが判らない。
「太陽のように、周りにぐるりと取り囲んだ9つの小さな円。免罪と信者レベルは、寄付金によって9つに分けられるの。現レベルは、丸を塗り潰すことで表現される」
そう思って再度バッチを見てみると、確かに玲くんのバッチには、9つの円が黒く塗り潰されたような模様があるけれど、あたしと由香ちゃん円には何も塗り潰されていない。
「最低ランクの"ランク0"は購入代の10万。丸が塗り潰されていないその形」
何と!!
これで10万円!!!
バッチを摘んでいる指がぷるぷると震えた。
「10万で免罪されるのが安いか高いか…微妙だよな」
由香ちゃんがぼやきながら、指の腹でバッチを撫でている。
「ランクを上げたければ、その丸1つにつき…約1,000万円単位の寄付金が必要になってくる。お金がない人は、黄幡会へ信仰の深さを見せればいい。私みたいに…勧誘するとかね。ほら…丸が3つよ」
3,000万円分、歩く広告と化しているらしい晴香ちゃん。
宗教も結構シビアなお金の世界だ。
だけど勧誘で、それだけのランクをくれるのは、何とも…。
免罪って…そういうものなの?
「丸3つでどんな特典があるの?」
思わず特典を聞くのは…あたしが浅ましいからか。
いやいや、庶民はこういうものだと信じたい。