シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「こうして、道端で話して歩いても自警団は現われないでしょう? "ランク3"は"案内役(ガイダー)"とも呼ばれ、青い制服を支給されるの」
「以前…桜達が着ていたな…」
玲くんの独り言のような呟きに、そういえばS.S.Aで再会した桜ちゃんの服も煌の服もそうだったことを思い出した。
巷(ちまた)で流行している服でもあるまいし、黄幡会の信者でもあるまいし、2人は何処からこの服を入手したんだろう。
「免罪符がなければそれだけで罪、罪人は更正施設に粛正される。免罪符があれば…どのランクかを、自警団は支給された…白い携帯型の探査機で調べるの。
そして例えばランク3の私のように、"案内役(ガイダー)"が関わった者は罪は不問…とかいう、特殊な"罪の軽減"が実行されるわ。
探索機では登録された人のありとあらゆるデータが参照できるの。ランク以外にも、住所や家族構成は無論、過去に犯した全ての罪のデータまでね。
それを参照するには、送信した写メでデータ照合したり、個人名と誕生日で検索かけたりと、色々あるみたい。そこから得られるデータを元に、自警団は動くの」
――九段下、更正施設内。
玲くんが口にした場所に、そうした個人情報のデータが集められている可能性は大きい。
黄幡会と自警団が何処まで密接に関わり合っているのかは判らないけれど、黄幡会は…そうしたデータ管理に際して無関係ではないと思う。
データの内容は、単なる個人情報の域を超え、完全プライバシーの侵害だし、更に罪までも勝手に露呈されるならば、それを易々と使用する黄幡会及び自警団は、一体何様なのかと腹立たしい気持ちになる。
あたしは特別に信じている神様はいないけれど、人間の分際で、あるイチ組織が罪をデータ化して管理出来るとした点で、神様を侮辱していると思わずにはいられないんだ。
素人のあたしでさえ思うことを、誰も疑問に思わないのだろうか。
自警団員も、黄幡会員も…許容している東京都も。
憤慨しているあたしの横では、晴香ちゃんが喋り続けている。
「最高ランクの…玲さんみたいな最高の免罪符を持てば、大方の罪は許される。"エディター"に並ぶ権限も与えられる。それ以上の権力を持ちたければ、別途修行と更なる寄付金が必要ね。こんな真鍮ではなく、白金(プラチナ)の免罪符を与えられるわ」
まだまだお金をふんだくるらしい、阿漕な黄幡会。
如何にも御利益ありそうな、高価な免罪符は、果たして何処までの威力を持つモノなのか。
「"エディター"と同じ権限? どうして1人だけ…"ランク9"のを渡されたんだ? ここまで氷皇は気前がいいか? だけど…あの"あははははは~"が何でこんなに頭に響いてくるんだろう」
自分だけが"特別"であることに納得していないらしい玲くんは、やがて――