シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「"寄付金"――…


まさか――…



――…ATM!!?」



眼鏡越しの目を、カッと見開いた。


ATM?

振り込み?


………。

青いボンドカーの修理代?



「師匠…9つ、9,000万…そんなに振り込んだのかい…」


玲くん…、大根50円であんなに幸せそうにしていたのに、いつそんなにお金貯め込んでいたの? それが節約術の効果かな。

あたしもがんばらなくちゃ!!!


「寄付…そうだね、寄付…。15分で1割増してまで、沢山寄付したよ。"オウバンカイ"さんに…」

玲くんの目が潤んでいた。


「紫堂さんは熱心ね、そこまで寄付するなんて。晴香…感激。嬉しいわね、こういう人が居ると」


目をウルウルさせて落ち込む玲くんだったけれど、逆に晴香ちゃんの好感度と親近感はぐぐっとUPしたようで、自分のことも友達のようによく喋ってくれた。本音をぺらぺらと。


「私が黄幡会に興味を持った理由? 勿論…教祖代理がイケメンだからよ。それ以外に何もないわ。むしろそれ以外に何があるの?」


………。

"どや顔"で逆に聞かれちゃったよ…。

ここまではっきり断言出来る、欲塗れの素直な邪念が、妙に人間らしくてほっとする。


「教祖代理? "ディレクター"の計都様のことよ。麗しいわよね」


――晴香は、極度のイケメン好きだ。


彼女のイケメンセンサーにひっかかる計都。

どうしても、桐夏で見た…あの長い前髪にシワシワ&ダボダボ背広姿の、ダサダサ姿の印象が強すぎるんだ。


オッドアイの計都。

はて、そこまで美形だったろうか。

オッドアイが判るから前髪は上げていたはずだけれど、何だかその姿が心にきっちりと刻まれていない。

周りが美形過ぎて、計都の姿がぶれるんだろうか。


もし玲くんが女装していなかったら、晴香ちゃんは蕩けて脱会するだろうか。


何と言っても夢の王子様。

"エディター"が欲しがった王子様。


「ねえ……」


晴香ちゃんがまじまじと玲くんを見つめて言う。



「玲さん…男性…ではないわよね?」


どっきーん。


あたしのチキンハートが口から飛び出しそうだ。


「私が男性に見えますか?」


にっこり。

玲くんは顔色一つ変えず、余裕とばかりに微笑む。


一方由香ちゃんは青ざめて歯がガチガチだ。

思わず由香ちゃんのほっぺを抓ったら、由香ちゃんもあたしのほっぺを抓り返してきた。

多分あたも似たような反応だったんだろう。


そんなあたし達をまるで奇異なるものを見ているかのように一瞥した後、晴香ちゃんは溜息をついた。


「そうよね…何でそう思ったのか…。願望かしらね、玲さん綺麗だから」

「あら、光栄ね」


にっこり。


余裕を崩さぬ玲くんに対し…晴香ちゃんが怒濤の攻撃をしかけた。
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