シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ニャア!!」
「ひっ!!!?」
途端、バックから出て来た白いふさふさな手。
忘れていた頃に飛び出る、心臓に悪い肉球。
あたしのオトメモードをぶち壊し、くいくいと誘うように動くこの手は――
お前とも手を繋げといいたいのか?
「ん? どうしたの? 何の声?」
晴香ちゃんが振り向く寸前で、あたしはクオンの手をバックに押し込めて、
「ニャアニャア」
馬鹿みたいに、クオンの真似して鳴いてみた。
「フーッッ!!!」
怒っている声がするから。
「フーッッ!! フーッッ!!」
やはり真似したら、
「神崎さんって…変わっているわね。それとも、動物霊にでも取り憑かれているのかしら? 一度…"教祖(マスター)"に見て貰うといいわ」
心底同情の眼差しを貰った。
「名前を言えば優先的に"診て"貰えるよう手配しておくわ。早く除霊して貰った方がいい。放って置くと…野生動物と化してしまうかもしれないわ。今、危険な状態に見える」
真剣に言われてしまった。
「うっ……」
「神崎…どんまい」
由香ちゃんに慰められた。
――一度…"教祖(マスター)"に見て貰うといいわ。
ふと思った。
「"教祖(マスター)"は…子供だよね?」
ウサギさんの着ぐるみのあの子を、紅皇サンはマスターと呼んだ。
正直あの子が、宗教の最高権力者で除霊などを出来るようには思えない。
何処までも普通の…可愛い子供だった。
「外見はね。だけど中身は…前教祖、一縷様の記憶を持っているの。説法もするし、除霊くらいお手の物よ?」
ありえない。
舌っ足らずのあの口調で何が出来ると言うんだ?
「…一縷…さんは死んだと、それが黄幡会の見解?」
玲くんの質問に、晴香ちゃんは頷いた。
「勿論。だって一縷様の死体があがっているんですもの。その年1つしかない…ミス桜華の指輪を嵌めて。例え頭が割られて、顔が判らなくなっていても…それが証拠じゃないの」
やけに断定的で。
「ふふふ、今年のミス桜華は玲さん。だからきっと明日にでも、学園長直々に、皆の前でトロフィーと指輪が授与されると思うわ。それがあれば芸能界入ることも容易いと言われているのよ? だからいつもその指輪を巡って女達が醜い抗争をしているの。
特に一縷様の時に準ミスになった先輩なんて、今年はミスを取る気満々だったみたいなのに…ひょっと出の玲さんに奪われ、相当怒って悔しがっていると思うわ。
準ミスはもう1人いたんだけれど、その人は転校しちゃったわ。ミスになれない桜華に魅力なくなってしまったのか」
玲くんは凄いモノに優勝しちゃったらしい。