シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「どちらにしろミスコンは、桜華学生の投票だけではなく、学園長の好みも大きく左右されるから、いかにも色仕掛けをして裏からミスになろうとした、去年の準ミス達は私は嫌い。

ミスは清らかなオトメであって欲しいわ。一縷様は判らないけれど、玲さんは処女?」

「!!!! ごほっ、ごほごほ…」


ああ、玲くんが動揺しすぎて咽せちゃった。


「ねえ、どうなの? 処女?」

晴香ちゃんは、こうだと思ったらストレートに突っ走るタイプらしい。

玲くんが困って、げほげほが苦しそうだ。


「そうだ、晴香ちゃん。ミスが死んだら…繰り上げにならないの?」


ぽんと手を叩いて、話題を強制的に変えたら、晴香ちゃんは身体の向きを変えてこちらを見た。

よし、興味はあたしの質問に移ったようだ。


晴香ちゃんの後ろでは、由香ちゃんが、ぜいぜいと息をする玲くんの背中を摩っている。


「優勝の証である指輪が死体と一緒に焼かれたから無理ね。指輪には年度と優勝者の名前が彫られているし、学園長は"再発行"はしないと断言していたから、ありえないわね」


ミスコンの世界も、結構ハードだ。

緋狭姉が大好きな愛憎劇が繰り広げられていてもおかしくない気がする。


「名前入りの1つしかない指輪していたのなら、頭割られて首絞められた死体は一縷…さんかあ…」

思わずぼやく。


「そうだと確認したのは黄幡会、計都様だったらしいわ。そして計都様は1人の子供を連れて来た。それが"教祖(マスター)"。

"教祖(マスター)"は一縷様得意の占星術(ホロスコープ)や魔術が使え、教義を知り尽くし…何より公言しているのよ、自分は生前一縷で殺されたって。黒髪三つ編み、眼鏡をかけた女の子にってね。一縷様でないと知り得ない情報も色々持っているみたい」


素直に受容出来ない話だ。


"私は誰々の生まれ変わりで、その記憶があります"


そして生前の…プライベートなことを事前に友達や家族、義兄の計都からでも聞いて、1つや2つそれを皆に語れば、それだけで例え子供だろうと転生話は成り立たないか?

魔術関連だって、示し合わせた周りがそうだといえば、強制的に"是"となる。

どんな奇跡をかは知らないけれど、救世主でもあるまいし、そう簡単にホイホイ行えるものではないだろう。

口コミを悪用されているに違いない。


それに――

「一縷…さんの魂が生まれ変わっているのに、イチル様の呪いと言われる、桜華の猟奇事件は何故起きているの? 一縷さんの怨恨は何処に?」

辻褄が合わないじゃないか。
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