シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「"教祖(マスター)"は、悪しき"心"と戦われているそう。それが上手くいかない時に、事件が起きるんじゃないかしら?」
「それは…晴香ちゃん、君の見解?」
玲くんの問いに彼女は頷く。
「エディターのこと、君はどう思う?」
「エディター? あの人…正直気味悪くて。遠目で見ていても、突然憑依されているみたいに感情の起伏が激しくなる時があるから近寄りがたくて、よく判らないわ。今は…妊娠中らしいけれど」
「「「は?」」」
あたし達は声を揃える。
「「「誰の?」」」
「彼女が愛する王子様…じゃないかしら? 膨らんだお腹を撫でながら…王子様との子供だって公言しているらしいから」
あたしと由香ちゃんが瞬時に玲くんを見ると、玲くんは真っ青な顔をしてぶんぶんと思い切り頭を横に振っていた。
「ありえない、100%絶対ありえない!! 第一、あの後煌が…」
そして玲くんは舌打ちして。
「あいつ…エディターの心の中で、どんな"身代わり"を残したんだ? 何で妊娠話になる!!」
「え? "王子様"が誰か、知っているの?」
「「「だ、誰だろうね~。ははははは」」」
あたし達は引き攣りながら、笑って誤魔化す。
"膨らんだお腹"
数日間で、お腹は膨らむものか?
「生きていたか。やはり、煌と桜が会ったのは…使い魔、式か。彼女は果たして…上岐妙か否か…」
玲くんの呟きが聞こえる。
「しっかし話戻すけれど…その"教祖(マスター)"っていうのは、本当に一縷…さんの生まれ変わりなのかい? 子供の戯れ言かもしれないじゃないか。それを大人が信じているのかい?」
由香ちゃんの質問に、晴香ちゃんは薄く笑う。
「否定的なのね。判るわ、かつての私もそうだった。だけど"教祖(マスター)"と話してみて確信したの。この子は…タダの子供ではなく、一縷様そのものの清らかな存在だって。そして計都様からも色々お話を聞いて、"教祖(マスター)"に実際奇跡を見せて貰って、私は入信を「ちょ、ちょっと待って、奇跡…あのウサ…いや、"教祖(マスター)"は晴香ちゃんの前で行ったの?」
晴香ちゃんははっきりと頷いた。
「ええ。私の…目の前で。他にも人はいたけれど」
あたしは、ひと言ふた言…あの可愛いウサギさんと会話をした。
一方的だったとはいえ…あれの何処が"一縷様"を彷彿できる?
何処に奇跡を行える清らかさを感じた?
あたしにはやっぱり、小さい子供としか思えないんだ。