シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
櫂と久涅のものと思われる2つの占星術(ホロスコープ)は、ぱっと見ても判りやすいほど…単純な形をしているんだ。
十字の形。
これは…凶相のグランドクロスと呼ばれるものだろう。
それくらいは、僕も知っている。
円の中にある、大きな十字架。
13の惑星は、同じ惑星が4方向に散って…固まっていた。
こんな相は巷(ちまた)にありふれているものでもないだろうし、こんなシンプルな形に纏められている占星術(ホロスコープ)を、僕達が同一か否か判断出来ないということもないだろう。
幾ら僕達が占星術(ホロスコープ)に素人とはいえ。
「完璧同じだよね。それとも蒼生ちゃんが、黒皇のものだと言いつつ…事前に作っていた紫堂くんのを、間違えて寄越したのかな」
「ううむ。氷皇から送られてきた方は、それぞれ色が違うだけで、誕生日書いてないからなあ…同一人物だとも…」
「前紫茉ちゃんに、完全同じ占星術(ホロスコープ)持つ人はありえないって言われたよ? だけど絶対とは言い切れないみたい。もしあるとすれば、それは特殊な…特別な関係だと」
特殊…。
特別…。
「師匠にも話したけれど…"模倣"と、久遠に…久涅は紫堂のこと言ってたけれど…ね」
由香ちゃんは八の字眉のまま、ちらりと僕を見た。
それは僕も後で聞いた。
久遠に警告を発しに来た久涅が、久遠にそう言っていたらしいことは。
「ニャア」
「お前じゃないの」
白いふさふさネコは、落ち着かないように、僕達の足元をぐるぐる回っている。
「そういえば」
芹霞が、何かを思い出すかのように考え込み、言った。
「S.S.Aで久涅に会った時…言ってたんだ」
――俺と…同じ天体配置を持つ奴に。
――吸い取られたんだ。俺の人生は。
僕は、思わず目を細めてしまう。
その言葉が真実ならば。
久涅と同じ天体配置を持つ櫂に、久涅の人生を吸い取られた…
久涅はそう言っているのか?
「どうしてそんな込み入った話をしてたんだい、神崎」
「ええと…この話になったのは…」
しばらく頭を抱えて考え込んで。
そして芹霞の視線が…僕の手首、月長石のバングルに向いた。
「それだ。守護石…の話してたんだ。久涅は何の石か、見せてと言ったら…」
――奪われたんだ。
奪われた…?
「久涅は何の石なんだい?」
「ん、何か珍しい変な名前。血がどうの…ええと、何だっけ」
どくん。
僕の心臓は、1つの嫌な可能性を見出して、不穏な音を立てて。
「……血染め石(ブラッドストーン)?」
そう…震える声で訊いてみたら。
「そうそう、それ!!!」
僕は…由香ちゃんと顔を見合わせた。