シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「あれは…紫堂の石じゃないか!!! 師匠、紫堂ファミリーは、同じモノを持てるのかい?」
僕は即座に首を横に振って否定した。
「持てない。生存している1人につき…1つだけだ。重複はありえない」
「そんなこと…久涅も言ってたなあ」
――一方が生きている限り、同じものはもてない決まりだ。
「ボク…何だかワケ判らなくなってきちゃったよ。それじゃなくても、不自然な程…久涅の顔は紫堂の顔にそっくりなのに。
鶏が先か、卵が先か…そんな押し問答している気分だよ…」
「だけど由香ちゃん。普通に考えて、久涅の方が先に生まれているのだから…久涅がその石の正当の持ち主でも良いんじゃない?」
「紫堂が本当に久涅を"模倣"して、不当に奪ったって? ありえないだろう。今の今まで紫堂は久涅のこと知らないでいたみたいなんだし、それに久涅は昔…紫堂みたいな顔をしていなかったと、久遠だって言ってたぞ?」
「ニャア」
「だからお前じゃないの!!」
どういうことだ?
櫂の血染め石は…櫂のものではないのか?
僕は…いつから櫂があの石を持して使い始めたのか判らない。
ただ――…
「何? 玲くん…?」
芹霞の心臓の代替品として埋め込まれたものであるのなら。
「フーッッ!!!」
「こら、ニャンコ!! 神崎と師匠は見つめ合っているわけじゃないんだ、師匠は熟考してるだろ!!? 師匠を邪魔するな!!! ボクに引っ掻くな!!! そういうのは八つ当たりっていうんだぞ!!?」
少なくとも8年前には、闇の力を司る"櫂の石"として、きちんと機能していたはずなんだ。
芹霞の胸に埋め込む案は…櫂1人では考え及ばない。
それは緋狭さんの知恵があったはずで。
その知恵を実現するには、櫂の力の目覚めが必要だったはずで。
風なり闇なり…その力の目覚めには、血染め石が必要なんだ。