シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
僕達の力は、力の結晶たる石との"同化"を想起することにより、体内という"石"に循環するように巡っている…その力の一端を引き出すことが出来る。
力が不安定な初期には、石という形あるモノに頼らねば、まず具体的な想起は無理だろうし、その石とて…心を通わせられる程の愛着がなければ、いくら櫂といっても、即戦力にはなりえないはずだ。
8年前。
その頃久涅は、既に僕に次期当主の座を奪われ、消息不明になっていた。
守護石は基本…生まれた時から肌身離さずに持たされるもの。
紫堂の血筋を引く者ならば、それは徹底されるはずで。
1つしか存在しない血染め石。
櫂が紫堂本家から神崎家の隣家に引っ越してきた時、血染め石は手にしていたのだろうか。
その時…久涅の元にあったという可能性は?
櫂が本家から追放されていた4年間。
その間は――
久涅は紫堂本家に居て、ぎりぎり次期当主の座にいた期間。
そして僕が久涅を追い出した期間。
僕は…8年前以前の櫂をよく知らない。
8年前以前、櫂は…
守護石として血染め石を持っていたのだろうか。
それを知るのは…
多分芹霞だけ。
だけど芹霞は…
櫂のことは覚えていない。
「頭きったあ、このニャンコ!!! ボクだって女の子だぞ!!?」
「クオン!!! だからその笑いはやめなさいって!!」
櫂と久涅はどんな関係があるんだ?
久涅の被害妄想だけならばいい。
だけど。
母親が同じ可能性だけに留まらず、何か別の…宿業めいた因縁があるのだろうか。
同じ運命盤を持つ2人。
同じ石を持つ2人。
同じ…顔を持つ2人。
早く…帰ってこい、櫂。
僕は…何だか嫌な予感がする。