シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「だけどね、家の鍵があいていて…中に入って見たら物が散乱してて、空き巣に入られたような状態なんだって」
芹霞は涙目だ。
「通帳印鑑とかは全部持って来たけど…節約の豚ちゃんの貯金箱、取られてたらどうしよう。あと額縁の裏側、辞書の間に挟んである諭吉さん…ぐすっ」
ヘソクリは見つけられたらお仕舞いだから、分散させた方が良いと…確か前に僕は言った気がする。
「神崎…。元々燃えて無くなったと思ってたんだろ? そういうことにしとけよ」
「由香ちゃん…。人間希望の灯火が見えたら浅ましくなるの。今、紫茉ちゃんに探して貰っているんだけれど…あ、もしもし? ある!!? 21カ所、21万!!?」
芹霞…分散させすぎ。
「何でこの子の記憶力は、そういう面ではいいんだろうね…」
「じゃあ何を取られたんだろう。え? 台所にたててある包丁がない? やばやばじゃない、紫茉ちゃん。探索しなくていいから、相手凶器持ってまだいたら…え? あたしの部屋まで上がってきた!!? いいって、紫茉ちゃん、危ないから…白い本棚の下段? 真ん中に不自然なスペース? そこはぎっちり詰めてたからスペースなんて…。真ん中って…アルバムだな。赤い分厚いアルバム。…ない? 盗まれたのそれ? 包丁持ってそんなの取ってどうすんの? 恐喝する気かな!!」
どうやら…盗難にあったのは、包丁とアルバムらしい。
「写真が数枚散らばってる? お寺? 高円寺の石碑? 千歳飴に、赤い振り袖、首に白いふさふさショール……ああ、それはあたしの七五三の時の写真だよ、多分。あたしの一番可愛い写真を残していくなんて…は? あたし知らないんだよ、あの女の子。何で写っているの? もしかして…心霊写真なんじゃない、それ!!」
あの女の子?
「芹霞、ちょっと電話代わってくれる? もしもし、紫茉ちゃん。何を見つけたって?」
『ああ、玲か。芹霞の部屋に写真が散らばっててな。その1枚が芹霞の七五三の写真らしいんだが、その後ろにな、由香が紫堂の家からくすねてきた写真の女の子が写ってるんだ。本当に…小さくだけれど』
「幽霊嫌!! あたしそういうの苦手なんだってば!!」
芹霞はガタガタ震えている。
当主の部屋にあったという…写真の少女。
それが何故神崎家に?
芹霞の七五三?
心霊…写真?
『なあ…言いそびれてしまっていたんだけれど、あたしが妙な地下室で煌と桜に会った時、あたし誰かの夢の中に潜っていたんだ。強制的に引き摺り込まれた…と言った方がいいかな。そこに…実は居たんだよ、その写真の子』
……!!!