シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

俺達は何に襲われている?

人間がここまで素早い動きが出来るものか?

どれ程いるよ?


連携も考えた。


俺が全員が入る結界を作り、櫂が攻撃する。

あるいはその逆。


しかし上手く行かない。

大量に襲う敵の爪のようなものを、何故か結界が弾かねえんだ。

結界の意味がねえ。


どんな理由かは判らねえけれど、このままだと早い攻撃にやられる一方だから、個々が逃げるのに集中するか、攻撃することで防御する…そんな防御策しかとれなかった俺達。

敵の数を捌きたいのに、その動きに…まだ身体がついていかねえから、もどかしさに地団駄もんだ。


視界の端に映るのは、暢気に茶をすすって立つアホハットとクマ。

きつい動きを繰り返す俺達に、にこやかに手を振っている。


「腹立つな~ッッッ!! おっさん'S!!!」


怒りに沸騰した頭が、1つの疑問を投げかけた。

どうして…敵はあっちにいかないんだろう?


………。


あんな様子で、敵を散らしているとか…?

まさかそんな馬鹿なこと…


「!!!!」


ある、かも知れねえ。

今…何かの影が、弾かれて霧散した気がする。


結界、か。


アホハットの創り出す結界は有効で、しかも守護と攻撃を同時に出来るのか。

力が強すぎるのか、特殊なのか。


腐りきっても…緑皇かよ。


五皇レベルの結界は、呼吸するのと同じくらいの易さで出来るらしいことは、緋狭姉から聞いている。

更には自分の力と同じ属性攻撃は跳ね返す…らしいことは、"約束の地(カナン)"で緋狭姉連れ込んで命が助かった俺達が証明済み。

呼吸するのと同じくらいの易さで常時結界を施し、自分の力を全て攻撃に転じて戦える五皇。


俺達はそうはいかない。

1つの意識を守護と攻撃に振り分けちまうから、100%の力を使いたければ、どちらかの特性を諦めねえといけねえし、2つの特性を使いたければ…効果半々になっちまうから、結局は役立たずのモノとなる。

例外なのは玲だけだ。


小回りが利かねえ"力"というのは両刃の剣。


大量相手とか肉体的な力ではどうにねならねえ強大で巨大なもの相手には、絶大な効果を発するけれど…、こうして狙いが定められない忙しい環境にあるならば、大きな威力も的外れに終わってしまい、ただ精神力が消耗するだけだ。

あてずっぽうに放つ程、時間や労力が早く消費するものはなく、血気盛んで挑む程に、成果がない衝撃に大ダメージを食らう。
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