シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
先端が軽くなった分、回転速度は増して速さに対抗出来る。
先端が波打っているから、殺傷力は上がる。
なんか俺、頭良くね?
思わずにやついた顔も、次第に強張り始める。
突き刺せねえ…。
掠ったような気はしても、掠られたものが見えなきゃ、ただの"気のせい"だ。
「俺…矛術の腕、落ちてしまったのか?」
「違うな…」
櫂の…少し息を乱した声がした。
「俺も"あたって"はいるんだ。だけど…感触がない」
ちらりと眺める櫂は。
「お前…何パワーアップしてるよ!! それ何よ!!?」
緑色に輝く…剣みたいのを手にしていた櫂。
「集団での速さに対抗するのに、体術だけでは反応が鈍すぎる。風を…顕現させてみた。お前の武器みたいに」
はああああ!!?
お前何簡単にそんなこと…。
「想念で守護石を別の物質に顕現が出来るのなら、想念で操れる風の力だって原理は同じ筈だ。元が石であったか石でないかの違いで」
「力を顕現させるってお前、何者だよ、櫂!!!」
「櫂だって…お前自身が言ってるだろ、馬鹿犬」
髪をまた思い切り毟られた。
先刻から、俺の髪を毟ってばかりの阿呆リス。
「ハゲたらどうするよ!!!?」
「"ふさふさ"の代わりに、被ればいいよ!!!」
待ってましたとばかりの、嬉々とした声。
絶対…カツラのことじゃねえな。
「………。俺はハゲても、クルクル被るの断固拒否!!!」
「なんて非道なイヌなんだ!!!」
がんがんがんッッ。
「~~ッッ!!!」
絶対コイツ――
クルクルを畳まれた腹いせだ。
誰が被るか、あの変なクルクル帽子!!
「こら駄犬、休むなよ。敵だ、敵!!! あっちに、えいえいえいッッ!!!」
また…何処から調達しているか判らねえ、鉄の胡桃の遠隔攻撃。
そっちに集中してくれ、もう髪を毟るな。
「何処だ何処だ? とりあえず此処だ、えいえいえいッッ!!」
本当に、完全当てずっぽう。
こんなに投げて居るのに、どうして俺の頭から重みが消えないんだろう。
「うわわわわ!!! 俺に投げるな、あっちにして、あっち!!!」
仲間であるはずの小猿が、キーキー泣いている。
哀れ小猿は、プチパニックを起こしているようだ。
櫂は、優雅で見事な剣捌き。
緋狭姉自慢の愛弟子は判るけどよ、お前現役ブランクありすぎたクセに、なんでさっくりと応用編までやり出すよ?
俺なんか…
――また鍛錬をさぼっていたな!!! 前回出来ていたことがなぜ出来ぬ!!!
また初級編からやり直しさせられるっつーのに。