シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

出現

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「もしもし!!? もしもし紫茉ちゃん!!!?」


玲くんの焦ったような声が響く。

嫌な予感に心臓がドキドキする。


――桜あああああああ!!!


あたしの家の地下室で、紫茉ちゃんは何を見つけて取り乱したのか。

紫茉ちゃんと繋がる電話からは、その状況を解することは出来ず、やがて通話終了の虚しい音が聞こえた。


「紫茉ちゃんが切ったわけではないな。どういうことだ?」


固い顔をした玲くんがすくりと立ち上がり、


「朱貴がついているとはいえ心配だ。神崎家に行こう」


あたし達は頷いて、玲くんに追従の姿勢を取る。


その時――


「僕の携帯が鳴ってる?」


玲くんはポケットから、バイブで震える白い携帯を取り出すと、


「紫茉ちゃんからだ…」


ディスプレイを確認した玲くんは、急いで応答する。


『玲、こちらは心配ない』


電話口から聞こえたのは、紫茉ちゃんではなく、紅皇サンの声。

ああ、紅皇サンが無事に紫茉ちゃんと合流できたんだ!!


最悪を予想していた中、一筋の光明を見出した気になった。

いつからあたしは、こんなに紅皇サンを頼りにしているんだろう。

紅皇という肩書きだけでも、あたしの大好きな仲間を救ってくれると、何処かであたしは信じているんだ。


「一体桜は…紫茉ちゃんは桜の何を見たんだ!!?」


『…地下室で、葉山が血まみれになって倒れていた。かろうじて息はしているが、身体中に凄まじい火傷の痕で、皮膚が爛れて悲惨な状態だ』


「火傷!!!?」


『今応急処置を施して俺の結界で回復させているが、外傷が酷すぎてあくまで現状維持の暫定的処置しか出来ん。葉山の回復を早めるためには、医療機関の助力も必要だ。お前が医者をしていた、東池袋の病院に運び込む。知らぬ処よりは融通が利くだろう。五皇の肩書きで、紫堂に手出しをさせない。俺がついててやる』


「判った。迷惑をかけてすまないが、頼む。僕達も駆けつけるから。病院で合流しよう。あ、紫茉ちゃんは大丈夫か?」


『……。俺がついている。お前に心配される筋合いはない』


「ん…そうだね」


『それから…今あのごついメイドに連絡をとった。10分かからずしてそちらに車が到着するはずだ。それで全員乗って来い』

「OK。じゃ後で」


電話を切った玲くんは、重い溜息を零した。

心配そうに…悲痛に歪められた顔。


火傷を負って重症の桜ちゃん。

紅皇サンの力でも回復出来ないなんて…。
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