シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
不可視 玲Side
玲Side
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――榊兄ッッッ!!!
いるはずのない、見えるはずのないその存在を口にして、一目散に外に駆けだした由香ちゃんを、僕は素早く捕獲して、芹霞の元に駆け戻る気だった。
膨れた瘴気。
脇目も触れずに飛び出した由香ちゃん。
それまで大人しかったのに、興奮して駆けだしたクオン。
一度期に起きた"突然"の偶然にひっかかりを覚えながらも、芹霞が1人で大丈夫と言ったからという理由ではなく、外界の方が危ないと…確かに僕は判断したから、由香ちゃんを追ったんだ。
この距離なら、由香ちゃんの捕獲の方が近く、そして芹霞の元に戻るのには近いからと。
背後で閉まる自動ドア。
由香ちゃんは何処に向かって走っているのか。
思った以上の速さで走っていた由香ちゃん。
その目標物が見えない僕は先回りも出来ず、ただその後ろ姿を追いかけて走り…そしてその手を後ろに引いて、僕の元にその身体を後ろに傾けると、
「兄貴が兄貴があそこに「ごめん、由香ちゃんッッ!!」
興奮する由香ちゃんの頬を、パシンと叩いた。
「し…しょ…う…?」
由香ちゃんは驚いた顔をしたまま、僕を見た。
少なくとも、由香ちゃんの今の世界に僕が入り込めた。
あとは…引きずり出すだけだ。
僕が居る、現実世界に。
「由香ちゃん、榊は居ない!! しっかりするんだ!!」
そう顔を覗き込んで、双肩をゆさぶると…、驚愕に見開いたその目許に、じんわりと涙が溜まってきて。
「師匠、居るんだ…あに「居ない。由香ちゃん、幻覚だ。戻ってこい!! 幻覚に負けるな!!」
「幻覚…じゃないよ、居るじゃないか、ほらあそこに!!」
「僕の声が聞こえる? 僕を信じるんだ!!」
「師匠、よく見てよ。あそこに、あそこに…!!!」
「僕には見えない。由香ちゃんは…幻を見てる」
「違…「現実に戻ってくるんだ」
「師…「僕を信じろ!!!」
「…う…。う…うわあああああん!!!」
由香ちゃんは派手に泣き出してしまった。
そんな彼女が、可哀相で仕方が無い。
僕は思う。
今まで彼女は僕達の為に懸命に心砕いてくれていたけれど…その実、かなり榊のことを心配していたのだと。
その心を抑えつけてまで僕達を笑顔で支えてくれていたのに、僕達はその優しさに甘えすぎて、由香ちゃんの抑圧された心に気づこうともしなかったんだ。
由香ちゃんだって、17歳のただの少女だ。
「兄貴と…ようやく兄貴と会えたと思ったのに!!!」
それをフルに道具のように動かし続けて、何が師匠だ。
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――榊兄ッッッ!!!
いるはずのない、見えるはずのないその存在を口にして、一目散に外に駆けだした由香ちゃんを、僕は素早く捕獲して、芹霞の元に駆け戻る気だった。
膨れた瘴気。
脇目も触れずに飛び出した由香ちゃん。
それまで大人しかったのに、興奮して駆けだしたクオン。
一度期に起きた"突然"の偶然にひっかかりを覚えながらも、芹霞が1人で大丈夫と言ったからという理由ではなく、外界の方が危ないと…確かに僕は判断したから、由香ちゃんを追ったんだ。
この距離なら、由香ちゃんの捕獲の方が近く、そして芹霞の元に戻るのには近いからと。
背後で閉まる自動ドア。
由香ちゃんは何処に向かって走っているのか。
思った以上の速さで走っていた由香ちゃん。
その目標物が見えない僕は先回りも出来ず、ただその後ろ姿を追いかけて走り…そしてその手を後ろに引いて、僕の元にその身体を後ろに傾けると、
「兄貴が兄貴があそこに「ごめん、由香ちゃんッッ!!」
興奮する由香ちゃんの頬を、パシンと叩いた。
「し…しょ…う…?」
由香ちゃんは驚いた顔をしたまま、僕を見た。
少なくとも、由香ちゃんの今の世界に僕が入り込めた。
あとは…引きずり出すだけだ。
僕が居る、現実世界に。
「由香ちゃん、榊は居ない!! しっかりするんだ!!」
そう顔を覗き込んで、双肩をゆさぶると…、驚愕に見開いたその目許に、じんわりと涙が溜まってきて。
「師匠、居るんだ…あに「居ない。由香ちゃん、幻覚だ。戻ってこい!! 幻覚に負けるな!!」
「幻覚…じゃないよ、居るじゃないか、ほらあそこに!!」
「僕の声が聞こえる? 僕を信じるんだ!!」
「師匠、よく見てよ。あそこに、あそこに…!!!」
「僕には見えない。由香ちゃんは…幻を見てる」
「違…「現実に戻ってくるんだ」
「師…「僕を信じろ!!!」
「…う…。う…うわあああああん!!!」
由香ちゃんは派手に泣き出してしまった。
そんな彼女が、可哀相で仕方が無い。
僕は思う。
今まで彼女は僕達の為に懸命に心砕いてくれていたけれど…その実、かなり榊のことを心配していたのだと。
その心を抑えつけてまで僕達を笑顔で支えてくれていたのに、僕達はその優しさに甘えすぎて、由香ちゃんの抑圧された心に気づこうともしなかったんだ。
由香ちゃんだって、17歳のただの少女だ。
「兄貴と…ようやく兄貴と会えたと思ったのに!!!」
それをフルに道具のように動かし続けて、何が師匠だ。