シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「あわわわわわ、神崎!!! 早くこっちへ!! こっちは師匠がいる!!!」


真紅色の惨劇図。

S.S.Aでも切り抜けた芹霞。

何の因果で幾度も危険の中に放られるのか判らないけれど、今は彼女の運の強さを信じたい。


来い、僕の元に。


芹霞はこちらに向かって、まっしぐらに駆けてくる。


由香ちゃんは力一杯拳でドアを叩く。


「この硝子割れない!! 皹すら入らない。神崎、神崎!!!」


ドンドンドンドン。


芹霞は僕達に向けて走ってくる。

僕達の間にある、もどかしいこの硝子のドア。


もう黙って…見てられない。


「由香ちゃん、外気功で壊す」


自警団が束で来ても蹴散らしてやる。

石灰(コンクリート)をも砕ける外気功ならば、強化硝子くらい難なく破壊出来るだろう。


僕は硝子に掌をつけて…


「はっ!!!」


瞬間的に気を外に爆発させる。



だけど――


「!!!?」


硝子は…壊れない。

僕の力による衝撃を全て吸収してしまったんだ。


外気功が…効かない!!?


そんな時、芹霞がこちらに来て、硝子を挟んだ向こう側から、ドアを叩いたりこじ開けたりし始めた。


「芹霞、芹霞!!!?」


何度も名前を呼べど、芹霞と視線が合わない。


僕は此処に居る。

目の前に居るというのに。


――!!!


「目が合った!!! 芹霞、芹……」


しかし芹霞は――


「「………」」


突如狂ったとしか思えない不可解な動きをしたかと思えば、僕に向けて中指を突き立てて、ふいと横を向いてしまったんだ。


………。



「師匠、神崎は――

師匠やボクが見えてないんだ」



そう思いたい。

僕だと判って中指突き立てられたら、正直凹む。



ドンドンドン。

僕達が叩く音すら耳に入っていないのか。


そして、硝子越し…追いついた黄色い蝶が芹霞の逃げ場を奪う。


「危ないッッッ!!!」



僕は意識を集中させ、0と1のコード変換を超速で行う。

外気功が駄目なら、電気の力に頼るしかないんだ。
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