シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
しかし――…
「師匠の力が…硝子に吸い込まれる!!?」
僕から放たれる青白い光は、透明な硝子板に阻まれて。
「何なんだよ、この硝子は!!!!」
黄色い蝶が壁のように芹霞を取り囲み、芹霞がクオンを落して座り込んだ。
それは…芹霞が命を投げ出しているようにも思えて。
「芹霞、諦めるんじゃないッッッ!!!」
硝子を壊そうと打ち付ける僕の拳が足が、血に染まっていく。
使えない外気功、そして紫堂の力。
鍛えられたはずの僕の力は、まるで役立たずで。
由香ちゃんも重いカバンを硝子にぶつけたけれど、結果は同じ。
僕の持ち札は、重いカバンと同列にしか過ぎないのか。
「芹霞ッッッ!!!」
嫌だ。
「芹霞、そこから逃げろッッッ!!!」
僕は芹霞を守ると決めたじゃないか!!
芹霞と共に生きたいんだよ!!!
「芹霞ッッ!!!」
居るのに。
こんなに近くに僕は居るというのに。
「芹霞、僕の声を聞けッッッ!!!」
届かない。
「聞けッッッッ!!!」
僕の声は届いていない。
「神崎、電話を取りだしてる。電話…そうだ、電話をかけよう!!!」
由香ちゃんが慌てて携帯電話を取りだして、芹霞にかけた。
「駄目だ、混戦のアナウンスが途切れたと思ったら、今度はずっと通話中だ!!! 何やってるんだよ、何処にかけているんだよ!!」
鳴らない僕の携帯。
芹霞が助けを求めているのは僕じゃない。
硝子一枚破くことが出来ず、ただ叫ぶしかない僕じゃないんだ!!
かつてもそうだった。
いつもいつも…芹霞が頼るのは櫂や煌で。
危機的状況で思い出すのは僕じゃない。
恋人なんて言っても名ばかりだ。
芹霞の心が…僕にないじゃないか。
「………っ!!!」
心が軋んだ音をたてた。
やり場のない想いが、全身を突き抜ける。
「あああああああッッッッ!!!!」
空を振り仰ぐように、僕は叫んだ。
全身の気が逆流した気がした。
「うわ…ボクの携帯…だけじゃない。この青いの…。此処周辺の電気から…猛速度で師匠に流れ込んでいるよ。師匠が師匠が…!!?」
何の為に朱貴に稽古をつけて貰った!!?
あの時の力を越せる実力を、まだ僕はつけていないのに。
弱い弱いだけで終わらせてたまるか!!
僕はまだ…限界じゃないッッッ!!!
――なあ玲。奥義に名前をつけないか?
名前。
名前でより一層力が引き出せるのなら。
「"サンダー――"」