シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
その時、何処からか声がした。
『……に……星冠(ティアラ)を』
バリーーーーーン。
硝子が割れる音がして。
「師匠!!! 硝子…吹き飛んだぞッッッッ!!!」
驚愕と歓喜に満ちた由香ちゃんの声を聞き終わる前に、僕は内部に入る。
キラキラと舞い落ちる硝子の破片。
その破片の下には、既に切り刻まれていた…黄色い蝶の亡骸が積まれていたんだ。
僕が断続的に感じていた、爪痕のついた内装風景。
血に染まった…生臭い空間。
「ぎゃはははははは!!!」
聞こえてきたそれは――
幻聴だと思った。
ありえない。
絶対あり得ない。
しかし僕の全否定を覆す…此の世には存在するはずのない、金色に煌めく男がそこには居て。
「マスターのはずねえよな。お前には…"血色の薔薇の痣"の匂いがプンプンする。忌々しい…真紅の薔薇。咲いているのを"真"とする、そんな傲慢な輩に…粛正を」
声までもそっくりで。
芹霞に向かわれるのは銀の爪。
僕が何度も目にしていた爪痕は、この鉤爪か。
何で人を襲った!!?
なんで此処に居る!!?
模倣された贋物だと思ったけれど、だったら何故…鉤爪とは反対の手には、墓に一緒に入れたはずの…芹霞の前の携帯が握られている?
――芹霞ちゃんからの命令を待っていないとな。
最期までそう笑顔で…あのメタルピンクの携帯を離さなかった男。
そして芹霞は、入院している間中充電が切れるまで…何度も何度も短縮番号「8」にて、応答するはずもない男に電話をかけていたんだ。
その男から貰った心臓に手をあてて、泣き続けながら。
その持ち主は――
「「陽斗!!!!!」」
叫んだのは、僕と芹霞がほぼ同時。
思い出したのか、芹霞は!!