シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


信じたいよ…芹霞の育ち始めた心を。

愛されていると。

前と状況は…変わっているのだと。


信じて…いいよね?


ああ――…


何でこんなに、切ないのかな…。

折角恋人になれたのにね…。


言葉としては繋がったのに、心が望むままに…愛し愛され続けることが、どうしてこんなに難しいんだろうね…?


永遠に消えないという、繋がりの保証が欲しいよ…。



「陽タンは今、何処にいるのだろうね~」


由香ちゃんが見兼ねて、上擦った声を出して話題を変えてくれた。


想い惑うことはやめよう。

由香ちゃんだって堪えている。


辛いのは…僕だけじゃないんだ。

頭を…切り換えろ!!


目を瞑って深呼吸して、僕は静かに目を開く。


「また黄色い蝶が出現している処か、血色の薔薇の痣がある処かに出没…待てよ? 陽斗の動きで、何かが見えてくるか? だとすれば…前の芹霞の携帯…」


僕はクオンに気を送りながら、ポケットから僕の携帯を取り出して操作した。

しかし電源はおろか、充電も切れている。


「ああ、師匠…さっき硝子壊すのに、周囲の電気を吸収したからね。ほらボクの携帯も電源落ちたままさ」

「そっか…。じゃ力…いや、車から取らせて貰おう」


今、僕の力はクオン回復に注ぎたいから。


「百合絵さん。師匠の携帯を充電させて欲しいんだけれど、これ…シガーライターソケットに入れてくれるかい?」

「はい」


由香ちゃんが運転席の百合絵さんに言って、銀の袋から変換用アダプタを取り出し携帯に繋げてくれた。

本当に何でも出てくる袋だ。


しかし何だか、由香ちゃんの様子がおかしい。

何か…戸惑っている感じがする。


「どうした、由香ちゃん」

「ん…百合絵さん、何だか暗いんだ。どうしたんだろう」


「本当? ねえ、百合絵さん?」


僕が声をかけてみれば、


「はい」


………。


「本当だ。…確かに暗いかも」

「だろう? どうしたのかな、食あたり?」

「え? 百合絵さん…生肉食べても平気な人だよ?」



「待って、何で玲くんも由香ちゃんも、何で"はい"のひと言だけで"暗い"って判定できるの!!? 百合絵さん、いつもとおんなじ調子じゃない!!」


「いや…大分違うよ。抑揚がないというか…」

「そうそう。無感情だよね」


「えええええ!!!?」
< 830 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop