シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
信じたいよ…芹霞の育ち始めた心を。
愛されていると。
前と状況は…変わっているのだと。
信じて…いいよね?
ああ――…
何でこんなに、切ないのかな…。
折角恋人になれたのにね…。
言葉としては繋がったのに、心が望むままに…愛し愛され続けることが、どうしてこんなに難しいんだろうね…?
永遠に消えないという、繋がりの保証が欲しいよ…。
「陽タンは今、何処にいるのだろうね~」
由香ちゃんが見兼ねて、上擦った声を出して話題を変えてくれた。
想い惑うことはやめよう。
由香ちゃんだって堪えている。
辛いのは…僕だけじゃないんだ。
頭を…切り換えろ!!
目を瞑って深呼吸して、僕は静かに目を開く。
「また黄色い蝶が出現している処か、血色の薔薇の痣がある処かに出没…待てよ? 陽斗の動きで、何かが見えてくるか? だとすれば…前の芹霞の携帯…」
僕はクオンに気を送りながら、ポケットから僕の携帯を取り出して操作した。
しかし電源はおろか、充電も切れている。
「ああ、師匠…さっき硝子壊すのに、周囲の電気を吸収したからね。ほらボクの携帯も電源落ちたままさ」
「そっか…。じゃ力…いや、車から取らせて貰おう」
今、僕の力はクオン回復に注ぎたいから。
「百合絵さん。師匠の携帯を充電させて欲しいんだけれど、これ…シガーライターソケットに入れてくれるかい?」
「はい」
由香ちゃんが運転席の百合絵さんに言って、銀の袋から変換用アダプタを取り出し携帯に繋げてくれた。
本当に何でも出てくる袋だ。
しかし何だか、由香ちゃんの様子がおかしい。
何か…戸惑っている感じがする。
「どうした、由香ちゃん」
「ん…百合絵さん、何だか暗いんだ。どうしたんだろう」
「本当? ねえ、百合絵さん?」
僕が声をかけてみれば、
「はい」
………。
「本当だ。…確かに暗いかも」
「だろう? どうしたのかな、食あたり?」
「え? 百合絵さん…生肉食べても平気な人だよ?」
「待って、何で玲くんも由香ちゃんも、何で"はい"のひと言だけで"暗い"って判定できるの!!? 百合絵さん、いつもとおんなじ調子じゃない!!」
「いや…大分違うよ。抑揚がないというか…」
「そうそう。無感情だよね」
「えええええ!!!?」