シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


僕は百合絵さんに、何があったか話を聞いてみようと思い、クオンを抱きながら…後ろから助手席に滑り込む。

膝元にクオンを横たえながら、はたと思い出した僕は、後ろに居る由香ちゃんに声をかけた。


「ああ、由香ちゃん。僕の携帯『→→#love#←←』のキー押して、アプリ起ち上げてくれる?」

「格ゲーの隠しコマンドみたいだな。意味ありげすぎるキーだけど…お? 何かが出てきた。"GPS"。この電話番号選択リスト…師匠、こっそりちゃっかり何神崎の設定してるんだよ!!」

「あたしが何?」

「あ、神崎は見なくてもいいから。キュートでヘビーなむふふな話さ」

「何だか判らないけれど、それは由香ちゃんと玲くんクラスの"オタク"のものなんだね」

「そうさ。このレベルをカタカナの"ネ"と漢字の"申"と書いて、"ネ申"というんだ!!」

「ふぉぉぉ!! なんか凄そうだね。また勉強になった!!!」


由香ちゃん、得意げに芹霞に何を教えているんだろう。

それに僕…由香ちゃん程、オタクになってるつもりはないんだけれど…。

……深くは考えるまい。


僕は日頃の櫂の要望もあり芹霞を簡単に追尾できるように、僕の携帯からでも、芹霞の携帯のGPSが参照出来るように設定している。

勿論芹霞の前の携帯もそうだった。

その時の携帯情報を消していなかったから、今度は…陽斗の居所を掴める手掛かりになるかもしれない。


「師匠…陽タン、凄い勢いで移動しているよ」

「どこら辺に?」

「新宿…今は歌舞伎町あたりかな」

「え、陽斗…"そっち"に走っちゃったの!!?」

「そんなワケないだろう、神崎。"腐腐腐センサー"を発動しない!! 危ないことしてると思うぞ。じゃなかったら、ボク達追ってくるはずだし」

「………。少し泳がせてみようか。目的があるのなら、陽斗の行動に意味があるかもしれない。

よし、由香ちゃん。リストから、芹霞の前の携帯番号を選んで、画面メニューの『追尾開始』項目を押して。出て来るパスワードに『Just for you(ただ君のために)』って入力してくれる? 後は放置。『追尾終了』ボタンを押すまでGPSの軌跡は、携帯に地図の数値データとして保存される。後はキリいいところで、パソコンに転送&解析させて地図と照合すれば、何処に進んだのか一目瞭然だ」


「師匠の携帯、何処まで改良してるんだよ…」

「アプリだからね、簡易アプリ。簡単さ」


笑う僕は、クオンの頭を撫でながら…俯き加減の百合絵さんに声をかけてみる。
< 831 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop