シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「お前も…そうなんだな」
憂いある切れ長の目が、もう1人の…女に向けられると、女は睨みつけるようにしていた目を僅かにそらした。
「1つ聞く。最近…此処に、男が外界から来なかったか」
突然そんな質問をし出した櫂。
「長い黒髪。アーモンド形の目。
名前を…榊という」
「は、榊!!!?」
思わず俺は叫んでしまう。
櫂の顔は至って真剣だった。
「知っテ…どウスル」
そう…機械じみた変な抑揚で言ったのはコブの男。
「健ヤカなル者が"奇形"に、こレ以上何ヲ望む」
櫂は静かに即答した。
「……"裏"と"表"の調和を」
すると奇怪な笑い声が響き渡る。
2人が…機械の声で笑っていたんだ。
「何で笑うんだよ、お前ら!!!」
恫喝すれば、またもや憎しみに満ちたような眼差しが向く。
「調和ナド…夢」
「何故そう言い切れる」
櫂がその目を真っ直ぐに受ける。
まるで…8年前、初めて俺に相対し、謝った時のような…櫂の顔。
罪悪感を感じている…翳りがある端正な顔。
櫂は…あの頃と何1つ変わっちゃいない。
「我らガ"表"でどンナ扱イヲ得たのカ、貴様ハ知らぬだロウが!! 我ラヲ哀れみ或イハ笑い者にシ、そコマデ"人間"ノ矜持ヲ満足さセタイか!!」
「同じ人間だ、俺達は。俺は…お前達を卑下させない」
「「ホザくナ!!!!」」
2つの機械の声が重なった。
櫂は立ち上がり、周囲をぐるりと見渡しながら叫んだんだ。
「聞いているだろう、この者の"仲間達"よ。どんな姿になろうと、此処に"捨てられ"ようと…人としての自尊心は、その誇りは…失われていないはずだ。
此処がお前達の"救済所"であるのは判った。だが、此処から出られない理屈はないばずだ。太陽を見たいという心がある限り、それを受け入れる者がある限り。
お前達の心は"自由"のはずだ!!!」
静まり返った中、俺はそこに…耳をそばだてている多くの者達の気配を感じた。
人が…こいつらの仲間が、居たのか?
最初から…?