シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「お前達は榊を見たはずだ。あんな姿になっても尚、"表"で生きることを渇望していたからこそ、お前達は言われるがままに彼を"治療"したはずだ。その理由は何だ!!? 同情か!!? 憐憫か!!? そんなものじゃないだろう。人として…"同調"したからだろう!!?」
櫂は…何を知っている?
何で榊のことを言えるんだ?
「ならば、裏も表もなく、共存出来る世界を…一緒に作ろう!!! "表"に帰るのは…選ばれ恵まれた奴じゃない。お前達が望む限り、誰にでも出来るものなんだ!!! 諦めるな!!!」
しかし――
相手が悪すぎる。
「傲慢ナ…」
「何様ノツモりだ…」
殺気の具合が半端ねえ。
櫂の言葉を曲って取ったらしい。
そんなおかしな声が次々に聞こえてきて…
「殺セ…」
「殺セ…」
風が走る。
ガキンッ!!!
俺は、飛び出してきた1人の黒装束男が持つ刃物を、偃月刀で受ける。
「小癪ナ……」
次から次へと飛び出てくる黒装束達。
俺はその1つ1つを相手にし、そして――
「僕の従弟に何をするんだッッ!!!」
鉄の胡桃も飛び交えば、
「了解致した、翠殿。我、櫂殿の敵を蹴散らそうぞ」
ぐるぐる回る"わっか"も出現する。
皆が取り囲んで櫂を守る。
「紫堂櫂、背後ッッ!!!」
小猿まで…あの銃で参戦する。
「わわわわわわ。撃った…撃てたけど…腰抜かした…かも」
皆、皆…櫂を守ろうと必死で。
櫂の存在に心奪われた者達で。
どれくらいの数のどんな奴らが潜んでいるのかは判らねえ。
だけど見るからに、五体満足の体の奴らではねえ。
欠けた肉体を補うように、武器を取付け…それが生きる常識としているような奴ら。
もしかすると…最初に出て来た3本足も仲間かもしれねえ。
哀しすぎるよな。
その体が先天的か後天的かは知らねえけれど、心が判らなくなるまで落ちぶれてしまったら、人間終わりだと思う。
例え矜持や誇りがあろうとも、人からの心が素直に受け取れねえんじゃ、それはもう人じゃねえんだよ。
敵として襲ってきたはずのお前等に、無条件で守ってやると宣言した櫂の心意気が伝わらねえなら、心は完全に化け物だ。