シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「夢路様…」

「夢路様、しっかりなされよ…」


わらわらと…こけし様を心配する黒装束が、こけしを取り囲んで声をかけている…何とも奇妙な図。

俺達は顔を見合わせ、ぽかんだ。


その時、ダダダダと何かが猛速度で突っ込んでくる気配がして。

見れば…凄い乳を派手に揺らした着物姿の女が、裸足で髪振り乱しながら走ってくる。


「なんだありゃ……」


何と言うか…まあ、尋常ではないくらいにでかい…乳に目を奪われていた俺の前を通過した牛女は、


そして――



「帰ってきたんだね、久涅!!!!」



櫂の腕に抱きついて、その豊満な乳を押し付けたんだ。



「久涅!!!?」


思わず聞き返したのは櫂が先で。

乳に挟まった腕を抜こうとしているが抜けないらしい。


……少し困った顔をした櫂は、貴重かも。

赤くならないのは…お前、肉の塊くらいにしか思ってないだろう。

それが芹霞だったらどう反応するよ。

俺だったら…。


………。



「煩悩滅殺!!!」


ガンガンガン。


やけに勘の鋭いチビに頭叩かれた。



「待ってたよ、久涅を待ってたよ!!!

目的は達せられたんだね!!!?」


目的…?



「睦月、その者は久涅ではあらぬ」


コケこけしの凛とした声に、場の空気はまた変わる。


「は? 久涅じゃないか。何処をどう見ても…おばあちゃん!!」

「ばあちゃん!!!?」


牛女は…こけしの孫!!!?

逆じゃねえかよ、この図は…!!



「睦月、その者は久涅の弟、櫂だ。離れよ。

紹介が遅れてしまったな。妾は夢路。"藤姫"の更に遠い先祖にあたる」


待て…。

藤姫で100歳過ぎていたんなら、"遠い先祖"は何歳よ?

こんなにお肌ぷくぷくの顔をして…実はしわしわこけし!!?


「ふうん? だったら…先刻まで、のろのろ動いていたミイラのオバケ…お前の生き写しなんだ? どうりで…なんか似てると思ったよ」

こけしの目に…冷たい光が過ぎる。


「この阿呆タレ!! 黙れ!!」


ピン。


「あうううっっ」


「翠殿…夢路なる者が、三尸の親玉ということか? 戦わなくてよいのか?」

「お、俺に難しいこと聞かないで~」

「では翠殿、櫂殿の説得は功を奏して和やかになっているのか? つまりこの者達は人間だったのか?」

「だからそういうことは本人に聞いて~」

「ではでは翠殿…」


金ピカゴボウ…。


「翠殿、翠殿…」

「ひいいいっ!!」


小猿の許容外のことを執拗に聞くな、人選間違えてる。

ま、これも小猿の成長の為だ。

頑張れ?

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