シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「もしも俺の言葉が信用に価しないというのなら、せめて俺の仲間の言葉だけは信じて欲しい。俺がどういう人間だということではなく、俺を助けるために必死になってくれたその優しさを信じて欲しい。
そういう人間だって居る。全てが迫害側ではない。
"表"の全てを信じろとは言わない。言わないが、俺の仲間の言葉だけは…耳を傾けてくれないか。真っ向から否定しないで欲しい」
櫂……。
「俺達は行かねばならない。"表"に戻らねばならない、果たさねばならない約束がある。だから…俺と引き替えに、この者達だけは此処を行かせて欲しい」
「櫂!!!?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。
「俺の姿態が気に障るというのなら、焼くなり煮るなり気の済むようにしろ。しかし…この者達には指一本触れないで欲しい」
「紫堂櫂、俺戦うよ!!!」
「そうだよ、僕の奥義炸裂すれば簡単に!!」
「我も助太刀致す!!!」
「必要ない。お前達は前に進め。すべきことを果たせ」
「馬鹿か、櫂!!! お前が一番、芹霞の元に帰りたがってるんじゃないか!! 緋狭姉も玲も助けて、強くなって帰りたがっていたじゃないか!!!」
櫂は微笑む。
「諦めてはいない。死ぬつもりもない。だが…帰るには時間がかかりすぎる。ならば間に合う時間に、煌…お前に託すから。緋狭さんのこと玲のこと…情報を頼む」
今生の別れみたいに、何を言ってやがるんだよ!!
俺を庇って体を張られるのは…緋狭姉でもう十分過ぎる程、身に染みたんだよ!!
「馬鹿なこと言うな!! 俺は…お前を守る為に、お前と走る為に居るんだろう!!? その俺に、お前残して行けとは何よ!!!?」
「俺の心…お前に託す」
「だからやめろよ、んなこと言うの!!! 却下だ却下!!!」
「俺だってそうだよ!!! 一緒に…一緒に帰るんだ!!!紫堂櫂が残るというのなら、俺だって残る!! 何があろうと耐えてみせる!!」
「駄目だ。翠…お前は皇城を変えるんだろう? お前が居なければ誰が変える」
「そんなの…落ち零れの俺がいなくたって…」
その時だ。
バシンッッ!!
櫂が小猿の頬を叩いたのは。
「お前の代わりは誰もいない。自分を卑下するな」
小猿は叩かれた頬に手を当て、今にも泣きそうで。
「僕が櫂の処に残る」
チビが地面に降りて来た。
ふさふさな尻尾を揺らして、櫂の前に立ち…櫂を見上げる。
「僕だけだろ、此処でお前守れるの」
「レイは…煌を導いてくれ。此処は俺の正念場なんだ。俺が此処の全員を納得させねばならない。納得させられないのは、俺の不甲斐なさ。ならば身体を張ってでも、信じて貰えるように訴え続ける」
「そこまでして、妾達と調和を求めるか」
こけしが一歩前に出た。