シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

説得 櫂Side

 櫂Side
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暴力では解決出来ない、俺はそう思ったんだ。


俺達は、遭遇する者を全滅させて進めと言われているわけではない。

戦う必要はない。


そしてもし仮に戦闘事態になったとしても、実際煌だけで…この世界の2人の人間を数秒で体術だけで捕えられたのだから、未知数の夢路さえ気をつければ、全員で突破は出来るだろう。


しかし突破で終わることか?

此処を過ぎ去っていいものか?


"約束の地(カナン)"で再会した、変わり果てた榊が俺の脳裏から離れない。

あんな姿になっても尚、遠坂を案じるその心。

執念とでも言えるべきその"心"に、確かにあの時俺は同調した。


人間性に時間は関係ない。

昔人間で今は人間ではない…そんなことはありえないだろう。

姿態が変っても必ず変らぬものはあるはずだ。


それこそが心。

それだけは、失うことが出来ないものだと俺は思うんだ。


芹霞を想う故に姿態を変えた俺が、共に生きる未来を願うように、譲れない心こそが、存在理由だと…俺は思うから。


その心は…"目"が伝える。


此処の住人は、榊と同じ目をしている。


"表"に出れないと絶望しながらも、それでも諦めることを辞めてはいない、
不屈な闘志。


それ故の俺達への憎悪。

それ故の俺達への憤怒。


正直、あの姿で、尋常ではない動きや力を見せながら、生命を維持出来ているのは凄いことだし、あの状態の榊を生き長らえさせているその"技術"も凄いもので。

榊が、どの程度の"被害"で此処に"運ばれた"かは判らないが、少なくとも内側に針の付いたあの仮面は、ここの住人の仕業ではないだろう。

榊は、別の手によって、更に攻撃されたのだと…俺は推測する。

外套を纏っているのも理由があると思うんだ。


"約束の地(カナン)"にて、榊として俺が確認できた部分は…目だけだった。

そんな状態の榊は、此処の住人に受入れられ、生きる為の"救済"が施された。

それを思えば、その"延命技術"もまた、"生きたい"という心が根底にあるからあったもので、それを施す者も施される者も…生きたいと思う人間全てが、こんな処で燻って過ごしたいわけではないと思ったんだ。


それ故に結ばれた、悲痛な絆が此処にはあった。

皆…同じ目をしているから。

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